横浜駅の東口から20分ほど歩いたところ、横浜中央卸売市場というのがあります。
いわゆる築地の横浜版みたいなもんで、いろんな魚や肉、野菜などの食べ物がセリで売られているようです。
(実際、セリを見たことは無いので「いるようです」という事で。)
この横浜中央卸売市場の水産物部は、一般の人は入れないようなオーラをガンガンに出していますが、実は早朝以外は一般の人でも1階のみ入る事ができます。
そこには、いわゆる市場めしと呼ばれる店があり、いつも廉価で新鮮でドカ盛りな海鮮が朝から頂けるとあって、みうけんの夜勤明けの朝ごはんにスバラしく活躍してくれています。
この舟盛り定食は、ご覧の通りのボリュームに手打ちそばもついて1250円!!
ある日、お腹もいっぱいになったので少し市場の中を散策すると、奥まったところにお稲荷様の祠があるのを見つけました。
この市場にはお稲荷さんがある、と何かのブログで読んだ事がありましたが、食堂から意外と近くにあるんだな、という印象です。
このお稲荷さんは、きっと隠されたわけではないのだけれど、鬱蒼とした植え込みの奥の方にひっそりとあり、なかなか気が付かない場所かもしれません。
このお稲荷様を取り囲む玉垣には寄進者の名が刻まれています。
これ自体はどこにでもある光景ですが、やはり市場ならでは。
魚河岸や八百屋さんの名前が多く刻まれているのが実に特徴的です。
扁額には、「正一位 伏見市場稲荷大神」という名前が刻まれています。
陰刻ではなく陽刻で、実に立派なものです。
江戸時代に数多く作られた稲荷社ですが、その多くは伏見稲荷から分霊されたものではなく、個々人で祀ったものが多かったといいますが、こちらのお稲荷様は伏見稲荷から勧請されたようです。
横浜中央卸売市場は昭和6年(1931年)2月11日に開設されました。
お話しを伺ったところ、このお稲荷様も市場が開設された当時からここにあり、市場を見守ってきたそうです。今年は2020年ですから、もう89年もここに鎮座されていることになります。
さて、稲荷神社の祭神は宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)という女神様です。
この神様は須佐之男命の子であり、名前の「宇迦」は穀物・食物をあらわし、古くから穀物の神として崇められてきました。
その総本社が京都の伏見稲荷大社なのです。
この伏見稲荷で有名な千本鳥居には、この横浜中央卸売市場で奉納したものもあるそうです。
横浜市民の食を支える台所。
こんなところにも、こんな深くて良い逸話が残されていたのには驚きました。
このお稲荷様の前に座るキツネさんには、どことなく凛とした雰囲気が感じられ、あたかも自分こそが横浜市民の命をつないでいるのだ、と大きく誇りに感じているような気にもさせられます。
この市場で海鮮を美味しく頂いた幸せな秋晴れの日、このお稲荷様にそっと手を合わせ、こんにちの繁栄と飽食の時代に感謝するとともに、願わくば世界中の人たちが飢えることなく、毎日おいしい食事ができるようにとお願いをし、原付で市場を後にしたのでした。