秋も深まったある日、午前3時に目が覚めてしまったのをいいことに、サッと着替えてバスに乗り込みました。ソウル市内は深夜でも走っているバスが多くて便利なことです。深夜なのに、きちんと乗客もいます。
ソウル市民は寝ることを知らない宵っ張りだとよく言われますが、この日もどんな深夜でも街中には人が歩いていました。
途中バスを乗り換えながら30分ほど揺られて、到着したのは永登浦駅。永登浦と書いてヨンドゥンポと読みます。
古くから栄えた町で、いわゆるソウルの端っこの盛り場の一つです。
正直ソウル市民の中からは見下された町というか、貧乏人の集まる街、治安の悪い街などと良いイメージはありません。
とはいえ、最近になってタイムズスクエアなどが開店し、駅前の売春窟もだいぶ摘発されて「浄化」され、昼間から夕方ともなれば多くの人々が楽しそうに闊歩する町ともなりました。ただ、この日は時間帯も時間帯だったので、駅前の交差点も閑散としていますね。
みうけんが韓国という国に興味を持つようになったきっかけの一つに、同時読んでいた週刊モーニングという漫画雑誌で連載された、「李さん家の物語」「ユニ」という漫画がありました。
もう20年以上も前のことです。それから韓国語を独学で学び、韓国のSNSで友達も作り、韓国に通うようになり、一時期は国際恋愛も経験しました。
韓国に初めて行き、当時はインターネットすら普及していなかった時代で、文庫本サイズの地図帳を片手に「李さん家の物語」「ユニ」の聖地巡礼をしたものですが、そのうちの一箇所に永登浦の町がありました。
漫画の中でも、この街は「街全体が貧困に覆われている。文化の発展も10年遅れた街だ」などと散々な言われようですが、それであるが故に日本にはない韓国大都会の原風景が数多く残った街でもあったのです。
まるで1980年代、韓国全土で民主化運動が吹き荒れた時のような風景がそのまま残り、人々は温かく、純朴で、皆が一生懸命に生きている姿を目の当たりにできる街でした。
そこには、決して旅行ガイドには乗らないナマの韓国があり、外国人もほとんど訪れないためボッたくりもない。
ある意味安心できる街だったのです。
それ以来、みうけんはこの永登浦の街を心のふるさとと決めて、韓国に行った際は必ずこの街に「里帰り」する事にしているのです。
まず訪れたのは、24時間営業のマート。
来るたびに店名が変わっているような気がしますが・・・
店内は普通にスーパーです。
調味料、お菓子、お酒など最低限のものはだいたい揃うので、渡韓のさいはたいへん重宝していました。
まぁ、今回は短期滞在だったのでお茶を一本購入。
次に駅前から伸びる通りを歩いて、ビックリしたのがこちらです。
まぁ、なんとも近代的になっています。
少なくとも、2014年5月に来た時はいかにも屋台といった感じの露店と、本格的にテントを張ってイスまで備え付けたポジャンマチャがどこまでもビッシリと並んでいたもんです。
下の写真が2014年5月のものです。
何とも風情が無くなってしまいましたが、それでも屋台の味は健在でした。
いろいろありすぎて、目移りしちゃいますね!!
オデンを2本食べました。
1本700ウォンです。このツユがまたアツアツでうまいんです!!
道で見つけた「銀河鉄道999」のポスター。
誰でしょう、この人(笑
少なくとも、原作に出てくる鉄郎には見えません。すでに機械人間だしw
ただ、「戦士の銃」は雰囲気出てますがねぇ。
ここから、永登浦伝統市場に入りましょう。
この時点で朝4時半。日本であれば街じゅうが眠っている時間帯です。
やはり、こちらもひっそりしていました。
しかし人が絶えず行き交っているのも、また事実。奥のほうは煌々と灯かりがともっています。
昔、この市場で「トイレ」はありませんでした。
ただし、「べんじょ」ならありました。暗くて狭い路地の奥の、とても狭くて臭くて、お世辞にも快適とは言えないものでしたが、いつの間にかこんなにキレイに!!
奥の方に行くと、営業開始した店がチラホラ。
売り物を乗せたバイクが通路を行きかい、まだ半分以上の店が閉まっているのに活気づきはじめています。
このあたりは野菜や穀物、とうがらし粉を中心に扱っているようです。
韓国は野菜をよく食べますが、肉もよく食べます。
特に豚肉と鶏肉が多いような気がします。実は牛肉はあまり一般的ではありません。
「永登浦伝統市場は禁煙区域です」
何ともありがたい事ですね。こうやって書かれるという事は、吸いながら歩く輩が多いという証左でもありますが!!
こんな時間でも、ちゃんと営業している店があって、ちゃんと買い物をしに来る人がいる。こうして、韓国の経済は成り立っているのです。サムスンやKIAのような大企業ばかりが経済ではありません。
せっかくなので、動画で撮り歩き〜
これが日中になれば、もっと活気づきます。
細い路地も散策してみました。
この薄暗い時間では人通りも少ないですが、それでも充分に雰囲気が出ています。
これにてお散歩は終了。
またバスに乗って宿へ向かいます。
夜もだいぶ明けて空が白んできました。
朝早く、ヨンドゥンポの町からイテウォンに向かうバス。ただし一回乗り換えですが。
こうして韓国でバスに乗る機会も、あと何回あるのだろう。
久々に歩き回った、夜中のヨンドゥンポ。
マートで買った「太陽のマテ茶」が、渇いたのどに吸い込まれていくのを感じながら、また必ず来る事を心の中で約束しつつ、橋を渡るバスから朝もやにかすんだ遥かなる漢江を眺めたのでした。