みうけんのヨコハマ原付紀行

愛車はヤマハのシグナスX。原付またいで、見たり聞いたり食べ歩いたり。風にまかせてただひたすらに、ふるさと横浜とその近辺を巡ります。※現在アップしている「歴史と民話とツーリング」の記事は緊急事態宣言発令前に取材したものです。

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恋の病に命を落とした 哀れな尼僧の涙の伝説(海老名市)

開発の波著しく、日々その姿を変えていく海老名駅前から国分寺の跡に向かい、その裏の細い急坂を原付でグイグイ登っていくと、こぢんまりとした墓地の向こうに丹沢大山の遥かなる山並みを望み、顔に当たる風も清々しい丘の上に出る事ができる。

 

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この坂道は、特に名もなき坂であり地元の人々の日々の生活用道路としてのみ機能しているようで、一見して何の変哲もない日常の光景が広がるところであるが、この坂の近辺には、聞くも悲しい尼僧の伝説が今なお語り継がれているのである。


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奈良時代の最盛期とも歌われる天平13年(741年)、民の安寧と幸福を願った聖武天皇は、国ごとに国分寺国分尼寺を建てて国の守りとするように命じた。

 

相模国では、海老名がよい土地であるとして荘厳な七重塔を始めとする国分寺が建造され、さらに北に500メートル離れたところに国分尼寺が造られたのである。

 

 

ある日、近くの相模川で魚を取って細々と暮らしていた若い漁師がいた。その漁師はいつしか国分尼寺の若い尼と恋仲となり、愛し合った二人は夜になるのを待ち、人目を盗んでは夜ごと、ひと時の逢瀬を楽しむようになった。

 

そんなある日、若者が困った顔をして黙っているので、何事かと尼が聞いたところ、「国分寺の輝きが余りにまぶしく、魚がみんな逃げてしまう。そのために、いくら漁をしてもしても魚を捕らえることができない。これでは生活も立ち行かなくなる、いっそ国分寺がなくなってしまえば・・・」と涙ながらに言うのである。

 

これには尼も驚いたが、そう言われてもどうする事もできない。尼は困ってしまい、その日は交わす言葉もなく、そのまま分かれてそれぞれの住処に帰っていった。

 

ある日の夜、突如として国分寺から火が出た。

火の回りは信じられないほどに早く、あっという間に燃え広がっては荘厳な伽藍も広大な仏堂も、一夜のうちに灰燼に帰してしまったのである。

 

火事にしても燃えるのが早すぎて不審である、と調べた結果、若い漁師のことを哀れに思った尼が油をまいて火を放ったということがわかり、尼はたちまち捕らえられて丘の上に首だけを出して生き埋めにされ、哀れかなのこぎり引きの刑にされてしまったのである。

 

その後になって、その場所からは1滴、2滴と水が流れ出るようになった。この不思議な水は「尼が罪を詫びるあまり涙を流して懺悔しているに違いない」とささやくようになり、いつしか尼の泣き水と呼ばれるようになったのである。

 

この水は昭和40年ごろまでは涸れることもなく流れ出て、地域では参詣する人もいたというが、高度経済成長にしたがって宅地開発の波に飲まれてゆく事となり、今となってはその言い伝えもむなしく住宅街へと姿を変えてしまっているのである。

 

現在、近くに残されている国分寺には、今なお尼の泣き水を慰める観音像が残されている。

 

 

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古い鐘楼の中にはすでに鐘は失われ、地蔵堂として使われているが、その奥には何体かの石仏が祀られ、今なお献花と線香が絶えることがない。


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その奥の如意輪観世音と思われる観音像が、尼を慰めるために建立されたものだと言い伝えられているのである。


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それから、国分寺へお詣りにくる巡礼たちは

  朝日さし 夕日かがやく 国分寺

    いつもたえさぬ 尼の泣き水

と、口々にご詠歌を歌いカネを鳴らし、尼の冥福を祈る姿が見られたという。

 

いま、この高台に立って遠くに清々しい丹沢大山を眺めるとき、この秀麗な土地が哀れな尼が処刑された場所であるとはにわかに信じがたいものがあるが、崩れかけた如意輪観世音に手を合わせて冥福を祈るとき、若者を愛するあまりに自らが守るべき寺に火を放った若き尼僧の悲しみが、ひしひしと伝わってくるようである。

 

 

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