みうけんのヨコハマ原付紀行

愛車はヤマハのJog・CE50。時速30キロで見たり聞いたり食べ歩いたり。風にまかせてただひたすらに、ふるさと横浜とその近辺を巡ります。

見るも悲しき岡津古久の墓石と石塔郡たち(厚木市)

ある小春日和の日、厚木市で用事を済ませると、そのまま少し散策することにした。


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このあたりは岡津古久と呼ばれ、山を切り開いた自動車会社の技術センターがある以外は、のどかな農村地帯となっており、通りには歩く人もまばらである。


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古来、岡津古久・津古久の地区はヤマトタケルの東征伝説が残り、江戸時代には大山路が通るなど交通の要衝たる然を残しているが、交通の主役が自動車となった現代、道の石仏に歩みを止める人もない。

 

 

この位置にある石仏群には比較的 最近作られたものも多いが、その性格は不明であるものも多い。


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しかしながら、鎌倉時代前後に武士階級の墓石として流行したとされる五輪塔などもバラバラになったまま点在し、そのかたわらには観世音菩薩や地蔵菩薩を掘り込んだ小さな墓石が残り、この土地の歴史の深さを垣間見る格好の材料ともなっているのである。

 

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この観音像は観世音菩薩であろうか。

寛文十三年(1672年)の文字がはっきり読み取れる江戸時代の墓石で、寛文といえば四代将軍徳川家綱公のころのもの。実に350年近く前の古いものであるが、このようにしっかりと読み取れる状態で文字が残っているのは海風の影響を受けない内陸地ならではである。


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こちらも観音菩薩であろう。
これは文政十一年(1828年)のものだろうか。年号がはっきり読み取れないのだが、そうであれば上の如意輪観世音よりも150年あとのもの、現在よりも190年前のもの。

よく、歴史文献では○○何年と元号だけ記すことが多いが、このように「今から約○○年前」と書くとその古さがよくわかると思う。


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これらはみな墓石であり、手を合わせる人も絶えて久しい今でも、道端に葬られた有名無名の人々が今もここにひっそりと眠っているのである。

 

この場所から3分ほど歩くと、小さな無住のお寺がある。

 

 

 

このお寺は正式な名称を法悟山吉祥寺(ほうごさん きちじょうじ)といい、京都の南禅寺の末寺とされる臨済宗のお寺である。

寛文一三年(1673年)には歴史に名の出てくる古刹であり、さらに時代をさかのぼる事200年前後昔に「融厳存祝(ゆうげんぞんしゅく)和尚」が開山したと「風土記」にあるそうだが、その真偽は明らかではない。


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無住となったのも古く、案内看板によれば一五世までは住職がいたそうだが、天保二年(1831年)には無住となり、その後の廃仏毀釈運動にも負けることなく存続し続け、本尊の十一面観世音菩薩と如意輪観世音菩薩は「お針観音」と呼ばれ地域の崇敬を受けているという。


この小さな誰もいないお寺でみうけんが注目したのが、境内に立つ一柱の石塔。

 「一遍上人56世による六文字冥塔」といわれており、「南無阿弥陀仏」の文字が実に力強く頼もしく、「遊行正統當麻大本山」とあり相模原の無量寺が記されている。


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ここにも端には忘れ去られたかのように由緒すら明らかではない石仏や石塔、五輪塔が並んでいる。


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今では誰にも振り向かれることもなく、誰からも気にされる事もなくなってしまった多くの五輪塔や石仏は、その一つ一つにかつての人々の思いが込められて建立されたものである。

 

一心に願えば苦しむ者をあまねく救うと信じられた観世音菩薩の姿を墓石に刻み、または迷える死者を極楽に案内するという地蔵菩薩の姿を墓石に刻み、または仏舎利を入れた仏塔にあやかろうと墓を五輪塔の形にした名もなき人々の、少しでも極楽往生に近づきたいというささやかな願いと信仰の姿が思い起こされ、すっかり無縁墓となってしまった今だからこそ思わず手を合わさずにはおれないのである。