みうけんのヨコハマ原付紀行

愛車はヤマハのシグナスX。原付またいで、見たり聞いたり食べ歩いたり。風にまかせてただひたすらに、ふるさと横浜とその近辺を巡ります。※現在アップしている「歴史と民話とツーリング」の記事は緊急事態宣言発令前に取材したものです。

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戦後市民の念願を今に伝える 戦没者の忠霊塔(富士吉田市)

山梨県は富士吉田市にやってきました。

富士吉田市は個人的に好きな街ですが、富士急行の下吉田駅の裏手に新倉富士浅間神社という立派な神社があります。

 

この神社の歴史は実に古く、公式サイト( https://www.arakurafujisengen.com/ )によれば、飛鳥時代も終わりに近づいた慶雲3年(705年)の9月、当時の甲斐国八代郡荒倉郷へ、富士北口郷の氏神として祀られたのが始まりとされています。

 

その後、数回の富士山の大噴火にも耐え、現在では御祭神として木花咲耶姫命 (このはなさくやひめのみこと)、大山祗命(おおやまづみのみこと)、瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)をいただき、近隣はもとより関東東海甲信越一円から信者が集まり、日々手を合わせている姿を見ることができます。

 

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さて、眺めもすばらしく吹き抜ける風も心地よい新倉富士浅間神社の裏山を登っていくと、そこには立派な五重塔が誇らしげに建っていました。

近づいてみると、近代的な鉄筋コンクリート造りであることが一眼でわかります。

 

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これは「忠霊塔」と呼ばれているもので、正式名称は「富士吉田市戦没者慰霊塔」というものです。

 

その名の通り、富士吉田市の出身者のなかから、明治時代以降に日本が関わった日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、第二次世界大戦における戦没者の霊を慰めるために昭和33年8月12日に富士吉田市長を委員長として、「富士吉田市慰霊塔建設委員会」が設置されたのがきっかけです。

 

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この委員会は、忠霊塔の建設資金として旧下吉田町在郷軍人会の所有していてた林を恩賜林組合に売却した収益金300万円を基礎資金に充て、足りない部分はひろく民間からの浄財を募って総額936万円あまり(当時)をあつめ、昭和34年4月に着工されました。

 

その後、工事は順調に進んで3年後の昭和37年4月に完成を見るや、市民から広く認知され愛されて現在では1055柱もの英霊が合祀されているということです。

 

この忠霊塔は「銅板一文字葺」という鉄筋コンクリート造りの五層建てで、大阪四天王寺の五重の塔を模したというその威容はすさまじく、高さは19.5メートルにも及びます。

 

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神奈川県でも、よく神社や公園の片隅に自然石の一枚板に陰刻された「忠魂碑」が建てられているのを目にすることができますが、このような立派な五重塔というものはあまり見た事がありませんでした。

 

敗戦国日本の悲しいところで、戦後すぐにこのような慰霊碑や忠魂碑を建て、戦没者の霊を慰めんとしても、進駐軍の機嫌を損ねるからと云う理由でなかなか実現しなかったと言われています。

 

進駐軍は昭和27年まで日本に進駐していましたが、日本が本当の独立を勝ち取り、新国家建設に向けて動き出した時にようやく叶った地元の里人たちの念願だったのでしょう。

 

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いま、この地に立って富士山を眺める人々の表情には平和の明るさのみがきらめき、もはや忠霊塔の存在を気にする人もほとんどいないように見えました。

 

しかし、この忠霊塔が出来上がっていく過程を思い起こすとき、人生の全てを投げ打った人々が敗戦国民となってしまった悲しみと、遠い戦地から還らなかった肉親や兄弟、恋人たちの霊を少しでも慰めたいという当時の人たちのささやかなる願いが今ここに聞こえてくるようで、感慨もひとしおです。

 

 

 

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