みうけんのヨコハマ原付紀行

愛車はヤマハのシグナスX。原付またいで、見たり聞いたり食べ歩いたり。風にまかせてただひたすらに、ふるさと横浜とその近辺を巡ります。※現在アップしている「歴史と民話とツーリング」の記事は緊急事態宣言発令前に取材したものです。

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太古の昔より人々を見守った 五所神社前の明神の楠(湯河原町)

神奈川県と静岡県の境に近いところに、湯河原町の宮下という所があります。

このあたりは山がちな神奈川県西においては貴重ともいえる、平地の里が広がっているところです。

 

このあたりは、古くから栄えてきた湯河原温泉も背後に控え、かつての東海道も近くに走り、今なお観光客の姿は絶えません。

また、実に歴史が深いところであり、それだけに人々の歩みの痕跡も多く残されています。

 

その宮下の里、県道75号線の新幹線のガードをくぐったところにあるのが五所神社で、パワースポットとして多くの方々から人気を得ています。

 

この五所神社は古くは五所大明神社、五所大明神と称して今から1300年ほど前、天智天皇の御代に加賀の国の住人であった二見加賀之助重行らの手によってこの地方が開拓された時。土肥郷の総鎮守として天照大神はじめ五柱の神霊が鎮座されたと伝えられています。

 

治承4年8月に源頼朝が伊豆で挙兵した時、この地の豪族であった土井次郎実平は一族と共にこれを助けて源頼朝の軍を土肥の館に導き、石橋山合戦の進発の前夜には社前において盛大な戦勝祈願の護摩をされたといわれています。

 

この時に実平によって奉納された刀は今なお大切に社宝として保存され、それ以来は領土と庶民の崇敬が厚く、長寿長命の神様として崇敬されています。

 

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その宮下神社の道路の向いに、ひときわ大きく風格のある楠(くすのき)が聳えているのが見て取れます。

 

大きな楠の木、と言われてでトトロを思い出した方は相当なジブリ通ですね。

映画「となりのトトロ」の中で、サツキとメイのお父さんが「大きなクスノキだなぁ~」と見上げていた、あの木が楠です。

 

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こちらの木はトトロに出てくるものほど大きくはありません。

見た感じ、幹の幅は4分の1か5分の1程度でしょう。

 

しかし、永らくの間この地にあって、行き交う人々を見守ってきた古木の風格は充分にあると思います。


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トトロに出てくる楠には幹にしめ縄が張られていますが、こちらの楠にも同じようにしめ縄が張られ、さらに幹のウロに石仏が祀られています。

しかも、丁寧に鳥居まで建てられていて神秘的な雰囲気を漂わせています。

 

地元で掃除をされていたおばあさんによると、

「この石仏は江戸時代にはもうここにあったのよ!! とってもありがたいんだから、あなたもしっかり拝んでいきなさい!!」と、まるで江戸時代を見て来たかのような口ぶりです。

 

きっと、このおばあさんが子供のころからここにあり、このおばあさんは子供のころからこの石仏とともに暮らしてきたのでしょう。

 

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この楠の根元には、由来が書かれた木製の看板があります。

文字がかすれてしまっていて読むのに難儀しましたが、そこからこの楠にかかわる逸話を紹介したいと思います。

 

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この五所神社の由来については先に書いた通りですが、昔はこの神社の境内は広大にして幽邃にて、参拝者は前の千歳川の清流で身を清め、この明神の楠の下を通って参拝していたそうです。

 

正保3年(1646年)、もともと広い村だったのが、この木の下の参道を境に宮下村と宮上村の両村に分かれました。

その頃の参道には、数多くの楠の巨木が生い茂っていたそうです。

 

しかし、世の移り変わりとともに今はこの一樹のみが歴史の跡を物語っている、という事です。

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このウロの中を覗いてみると、中にいらっしゃったのは庚申塔でしょうか。

 

今となっては顔面が摩滅してよく分からなくなっているものの、頭上には雲がたなびき、六本の腕にはそれぞれ神具法具の類が握りしめられて、さらに足の下には邪鬼を踏みつけているのが分かります。
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この楠の説明版には、現在残る楠は1本のみとなっています。

どのような基準で数えられたのかは定かではありませんが、神社の境内にはもう1本の大きな楠が御神木として今なお青々とした枝を伸ばしています。


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御神木の根元から、空を見上げてみました。

わずかなそよ風に揺れる梢の隙間からは明るい光が波のように差し込んで、ただ木の下にいるというだけでも幽玄な雰囲気を感じ取ることが出来ます。

 

別に、大きな木の下で空を見上げたのはこれが初めてというわけでもないのに、これほどの感動を覚えたのはこれが初めてです。


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今では神社の前に広く整備された車道が走り、車に乗る人は振り向きもせずに神社の前を駆け抜けていきます。

 

しかし、ずっとずっと昔、人々の交通の手段が車ではなく歩きであったころから、この楠は来る日も来る日も旅人たちを見守り続け、ある時は御神木として、ある時は雨宿りの場所として、またある時は子供の遊び相手としてこの地にそびえ続けてきたのでしょう。

 

いま、脇を猛スピードで駆け抜けていく車の音を聞き流しながらこの楠の肌にふれ、どこまでも続いているような枝先を見つめていると、まるでこの木と共に生きて来た昔々の日々がよみがえってくるよな錯覚にもとらわれ、感慨もひとしおです。

 

 

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