JR相模線の宮山駅から、早春の長閑な住宅街の中を歩いていくとやがて相模国の一之宮として名高い寒川神社に着くことができるが、その寒川神社の末社として脇に鎮座するのが、宮山神社という社である。
現在では寒川神社の末社として、目立たない存在でもあるせいか訪れる人も少ない小さな社であるが、その境内は豊かな森に守られ、社の周囲を結ぶ水堀はあたかも穢れを寄せ付けぬ結界をなしているかのようで、どこか神々しく日本の神社の原風景を見ているかのようである。
この小さな社の中には、大物主神・須佐之男神・健御雷之男神・大雀命・聖神・宇迦之御魂命・伊邪那岐命・伊邪那美命と八柱もの神様が祀られている。
この神社は特に子育ての神様、乳出神としての信仰を篤く受けており、赤子を産んだ母親がこの神社に詣で、白豆腐を供えて一心に祈れば乳の出は良くなり、その乳を飲んだ子は病をしなくなるなど、子育てに霊験あらたかな神様として有名である。
2019年10月18日付タウンニュースには、「由緒にちなんで 豆腐早食い」という見出しで、
宮山神社の一帯が10月6日の神振祭でにぎわった。同神社は白豆腐を供えて祈ると母乳に恵まれるともいわれ、担ぎ手たちによる豆腐の早食い大会も。絹ごし豆腐に醤油をたらし、黙々と箸を動かしていた。
と紹介されている。
全国から人が集まる相模国一ノ宮のわき、一見してひっそりとたたずんでいるように見える小さな末社にも、どこかに漂うおごそかな雰囲気とともに、今なお多くの人々から信仰を集めていることに頼もしさを感じ、ただただ自然とこうべが垂れるのであった。