みうけんのヨコハマ原付紀行

愛車はヤマハのJog・CE50。時速30キロで見たり聞いたり食べ歩いたり。風にまかせてただひたすらに、ふるさと横浜とその近辺を巡ります。

小網代のカンカン石さまに込められた漁師たちの願い(三浦市)

三浦半島京急三崎口駅を降り、駅前の通りを南下して引橋の交差点を過ぎたら小網代方面に向かい、途中から小網代湾の方面に入る小道を見つけると、すぐに急な下り坂となっており小網代湾にたどり着くことができる。

 

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いちど小網代湾に下り、人影もまばらな漁師町を歩いて湾の奥に行けば、いかにも地元の漁師の信仰を受けている小さな神社があり、これが不思議なカンカン石を今に伝える白髭神社なのである。

 

 

この下り坂が、原付でなければ帰りの道を考えて下ることを躊躇してしまいそうな急坂であるのだが、それでも地元の日焼けした網代っ子は元気に駆け上がっており、この地に住むことへのたくましさとエンジン駆動の楽さにならされた我が身の危うさをひしひしと感じることができる。

 

聞こえてくるのは波の潮騒と、上空を旋回するトンビの声ばかり。

訪れる人もまばらなこの神社は、その静けさにすっかり時を止めてしまったようで、しばし空を眺めると風に吹かれ流されていく雲海と自然の雄大さに圧倒されてしまう。


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ここ白髭神社は別名は龍神社ともいい、鳥居の横には末社龍神社の石碑があるがために、いつしか地元でも龍神社でも通るようになってしまったとされる。

創建は天文年間というから1532年~1555年。まさに織田信長豊臣秀吉北条氏政伊達輝宗と戦国時代のそうそうたるヒーローたちが生まれたころであり、ここにも流れる時の雄大さに心奪われてしまうのである。 


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神社じたいは大きくもなく、むしろひなびた神社ではあるが、三浦七福神の寿老人担当として今なお篤い信仰を受け、手水鉢の上には新しい手拭が奉納されており、毎年年始の頃には三浦七福神が開帳され、昨今の御朱印ブームも手伝ってたいへんな賑わいである。


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また、水こそ入ってはいなかったものの大きなシャコガイの手水鉢もあったりして、いかにも海辺に生きる人々の信仰する漁師町の神様といった風情があり、思わずカメラのシャッターを切らずにはいられない。


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この神社の創建は先ほども書いたように天文年間とされる1532年~1555年。

漁師の仕掛けた夜網に何か光るものが掛っており、さっそく網を引き揚げてみると霊光を発している束帯姿のご神体であったので、さっそくご神体をお祀りしたのがきっかけであるというが、それがこの神社のご神体とされる寿老人なのであろうか。

 


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この神社は手入れも行き届き、本殿も見事に朱色に塗りかえられ、扉は閉ざされたままということもなく、いつでも参拝できるのが良いところである。


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本殿の中にはひときわ立派な絵馬が奉納されており、ぜひとも一見の価値はある。

一見新しそうなこの絵馬も、脇には文政十年と書かれており、西暦にして1827年。江戸将軍11代家斉公のころであり、それだけでもこの神社の歴史の深さが読み取れるが、木の薄片を巧みに貼り合わせて作った舟が実に見事である。


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このたびこの神社を訪れたのは、境内にある鳴き石を拝観するため。

この鳴き石は叩くとカンカンという金属音がするので「カンカン石」と呼ばれ親しまれている。


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この石はもともとは「きこいかり」という錨のおもりであった。

その昔、摂津の国(今の大阪と兵庫のあたり)に一人の船頭がいた。

この船頭はこの「きこいかり」を船のいかりとして使っていたが、ある日から白神明神様がたびたび夢の中にあらわれ、海上の安全のために「きこいかり」を持ってきて奉納してくれという。

そこで、わざわざこの地まで運び、白髭神社に奉納したのだという。

車もトラックもない時代、舟で運んだか牛馬で運んだかは知る由もないが、摂津から遠く離れた相模の国までこの石を運んだ船頭のことを思うと、昔の人々の信心の深さと粘り強さは現代人も見習うところが多いと感ぜずにはおれないのである。


実際にこの石をたたくと、カンカンというよりもキンキンという音にも聞こえるが、動画にはすべてを入りきらせる事ができない実に繊細な音である。

 


カンカン石さま

 

この白髭神社は小さいながらもきちんと管理されており、御朱印もきちんと用意されている。御朱印めぐりがお好きな方にもおすすめできる神社である。ぜひともこの平和な漁村の風景と静けさを味わい、しばしの間都会の喧騒と日々の忙しさを忘れていただきたいと思う。


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境内から望む人影もまばらな漁村と、波の穏やかな小網代の海を眺めるとき、この地で舟の上に生きた漁師たちの、豊漁の願いと航海安全の願いを一身に受けた白髭の寿老人さまは、龍神さまとも相まって決して時代の流れに忘れ去られることもなく、この地で人々を見守っている。

ここに、かつての人々の確かな息遣いと、漁に出ていく夫を父を兄を、今日も無事に帰らせてくれと拝む里人たちの姿が浮かぶようで、この地に刻まれてきた人々の思いがそくそくと蘇ってくるようである。