今日の映画です。
今回見るのは、2020年(令和2年)公開の韓国映画「♯生きている」(原題:#살아있다)です。
これは今の所、ネットフリックス公開映画。
チョ・イルヒョン監督。
これも、前回紹介した「新感染」に続くゾンビ物のホラー映画です。
◆◇あらすじ◇◆
ソウルの高層アパート群で暮らす、若きオンラインゲーマーのオ・ジュヌ(ユ・アイン)。
彼がいつものようにゲームに興じていると、オンラインでつながるゲーム仲間が「あれは何だ?」「映画じゃないの?」と口々に言い出す。
ほどなくして、ものすごい轟音で窓の下を見るジュヌは、人々が逃げ惑い、消防車が暴走し、立ち往生する自動車に次々とゾンビが襲いかかるのを目撃します。
そこへ、突如として部屋に駆け込んできて助けを求める1人の男。
彼は助けを求めるが、すでにゾンビに感染しており、ジュヌに襲いかかったところでジュヌはすんでのところで彼を部屋から追い出します。
そうこうしているうちに周囲の人々は次々とゾンビに襲われ、噛みつかれ、またゾンビになっていく。
ゾンビは生きている人間を見つけては噛み付いて仲間にし、その仲間が死ねば死肉を喰らい、とうとう周囲で生き残るのはジュヌだけとなってしまいます。
やがて、スマホにとどいたメッセージによって愛する家族までが全滅した事を知ったジュヌ。
食料も水も尽き、生きる希望を失って首を括ろうとしますが、それを引き留めたのが向かいの部屋に住む女性登山家であり、おなじく生き延びていたキム・ユビン(パク・シネ)でした。
2人は手を取り合って生き延びようと決意し助け合いますが、理性を失ったゾンビたちは容赦なく2人へと襲いかかるのです───。
◆◇感想◇◆
前回の「新感染」も一瞬も休む間も与えてくれない、まさに「釘付けにする映画」でしたが、今回の「♯生きている」も息をつぐ暇すら与えてくれないドキドキハラハラ、そして意外な展開の連続です。
この映画のポイントは、前回見た「新感染」の映画に比べ、ゾンビたちが生前(?)の身体能力、すなわち聴力や視力を失っていない事でしょう。
ことに、ゾンビとなった消防士に至ってはロープを使ってビルの壁をよじ登ることまで出来てしまう。
これにより、物音すら出すことができない生存者は、実に苦しめられます。
途中、襲われてゾンビになってしまった女性警察官が銃を落とし、その銃がのちの展開にも影響していますが、このように緻密に計算されて組み立てられた脚本もこの映画の見どころでしょう。
その反面で、韓国は日本と違って軍隊というものが一般社会にも浸透しています。
そのわりに、この事態の鎮圧に軍隊がなかなか出てこないのも不思議なところ。
最後の方で、この映画内での感染者は高層住宅地区に住む5万人、とニュースキャスターが言っていました。
前回の「新感染」のように全国に感染が拡大して国中が混乱しているならまだしも、ソウル市977万人のうちの5万人です。
そんなの、あっという間に鎮圧できそうなものですけれど、通算20日以上も放ったらかし状態というのも不思議な気もします。
映画の中でジュヌが癇癪を起こしてテレビを壊したりしてニュースを見ることができなくなるため、そのあたりの話が全く出てこないのですが、もしかして軍部の中でゾンビになったとはいえ国民に銃を向けることへの議論でもあったのか。
1980年の光州事件では自国の国民にアッサリと銃口を向けましたが、韓国軍も時代が変わったということでしょうか。
そして、後半の方に出てくる悪役が実に可哀想というか・・・
こういう映画では、だいたい悪役が出てきます。
前回見た「新感染」では、自分の保身しか考えずに主人公を見捨てようとする高速バス会社の常務でした。
今回の悪役は、窮地に落ちいったジュヌとユビンを助けると見せかけて睡眠薬を飲ませ、ゾンビと化した自らの妻に与えて食べさせようとする男性です。
まぁ、当然そのような事が許されるわけもないのですが、この男性の取った行動はひとえに妻に対する愛情からのこと。
最後は2人の返り討ちにあい、自らが妻に噛まれてしまいますが、それでもなお「これでよかったんだ、これで・・・妻よ、お疲れ様」と言い残して死にゆく姿は涙なしには観られないシーンでした。
この映画は、前回の「新感染」に比べてもよく出来たストーリーだと思います。
それに加え、無情なバッドエンドで終わらないところも、ホッとできるところだと思います。
これは、ゾンビものが好きな方、ハラハラドキドキが好きな方なら是非とも