呉世浩(オ・セホ)著「水の国のアリラン」全1巻 完結
今から20年以上前に週刊モーニングに何度か掲載されました。
当時は今ほど日韓関係が冷え込んでいなかった頃です。
単行本も1996年の発行なので今は絶版となっており、なかなか手に入りませんがアマゾンなどでは古本として、かろうじて流通しているようです。
これは韓国のシンマン(山野に自生する天然の高麗人参を探して生計をたてる人々)のお話で、大自然に深く根ざして生きてきた韓国の人たちの、一昔前の光景がありありと描かれています。
主人公のボンは幼い頃、両親に誤って強烈な薬効を持つ高麗人参を与えられ、生死の境をさまよいながらも何とか回復した後は超人的な心身の強健と絶倫を手に入れた人物。
絶倫ながらに性欲も旺盛で、高麗人参を探す前日には身を清めなくてはならないのに、なかなか清められません(笑
そして雑念のあまりか目の前にある大きな高麗人参を見逃してしまい、一念発起して身を清め、最後には心田(シンジョン)と呼ばれる大きな高麗人参の群生を見つけます。
第二部は、いまなお韓国に多く残るシャーマニズムの巫女(男性の場合もあり)であるムーダンが登場します。
ムーダンというのは職業として確率した霊媒師であり、依頼者のご先祖さまの霊を呼び寄せて依頼者と話させたり、また天のお告げを民衆に知らしめる橋渡し役として、古くから信仰の対象となってきました。
それゆえに怪しげでいかがわしいムーダンもいますが、単なる運勢占いや、会社を建設する土地を決める際、家を買う際の立地などを相談する人は現代でも多くいるそうです。
みうけんも韓国で何度か運勢占いをしてもらったことがありますが、「東南には車に気をつけよ」と言われた2日後に、まさに東南でスピードを出した車に跳ねられそうになったことがあり、偶然かも知れませんがヒヤッとしたことがあります。
当時付き合っていた韓国人の彼女とも、結婚はしないだろうね~とか軽く言われてしまい彼女は憤慨していましたが、その2年あとに本当に別れちゃいましたしね。
偶然かもしれませんが。
この漫画にも出てきますが、ムーダンはしばしば農業用の刀である「チャクトゥ」という刃物の上に乗ります。
これはみうけんも見たことがありますが、よく研いであり、リンゴを乗せるとスッパリ切れるのに、ムーダンが裸足で乗って踊っても足は切れない。
その光景は下記のチャン・ユンジョンのミュージックビデオでも出てきますが、実に不思議なものです。
そして、この漫画の面白いところは、今ひとつ時代背景がハッキリしないところ。
民族衣装であるチマチョゴリを着て、川で着物を棒でたたいて洗濯していたり・・・
リモコンつきのテレビもあるかと思えば
スニーカーをはいていたり。
たまに、昔なんだか現代なんだか分からなくなってくるのもこの漫画の面白さかもしれません。
それにしても、みうけんも韓国には50回以上、それも1回につき2週間くらい会社を休んで行くので、ほぼほぼ全部の地方は見て回りました。
その中で、韓国人の義弟の実家に泊まった事があり、そこがまた田舎でして。
みうけんも大きな魚を出してもらって、牛の近くとは行きませんが牛を眺めながら食事をした事があります。
それでもテレビはありましたし、さすがに上の絵のようにカマドで煮炊きはしていなかったですし、韓国人に言わせると今は日常的にチマチョゴリを着ることはない(お正月や冠婚葬祭ではよく着る)と言っていたので、この漫画は少々誇張気味であると思いますが、なかなか知ることができない韓国の田舎の人たちの素朴な生活を垣間見ることができる貴重な資料であると思います。