いしいさや著
「よく宗教勧誘に来る人の家に生まれた子の話」
みなさんは、エホバの証人という宗教団体をご存じですか?
キリスト教系の新興宗教団体で、世界中に「ものみの塔聖書冊子協会」という支部を持ち、830万人を越える信者がいるとされています。
この宗教は「新世界訳聖書」という独自の聖書を使い、日々聖書の研究に励んでいるということで、駅前や街頭で冊子を持って立っている信者の姿を目にしたこともある方は多いと思います。
みうけんとしては、本当に心から信仰し、その教義を実践する方々がいる以上はむげに否定するべきではないし、彼らにとっても我々にとっても「お互いに害をおよぼさない」以上、彼らの信仰と教義に口を挟む権利はないと思っています。
しかし、一見おだやかそうな彼らでも、聖書を独自解釈しているためキリスト教各派からは異端視され、また輸血の禁止・武道の禁止・兵役の禁止・誕生日やクリスマスを祝う事の禁止など多くの制約があり、また公式には謳っていませんが信者以外との接触やインターネットの閲覧などを暗に制限し、また教義に従わない(従えない)小さな子をベルトでムチ打ちする体罰を行うなど、いろいろと問題を抱えていることも否めません。
実際には過去(1985年)に川崎市でエホバの証人であった子供が交通事故にあい、両親が説得のかいなく輸血拒否を貫いたために子供が命を落とし、社会問題となった事もありました。
(その事件は後にビートたけしさんが主演する「説得」というドラマで再現されています)
みうけんがこの宗教、またこの宗教を取り扱ったマンガに大きな興味を抱いたのは20年も前にお付き合いした女性の記憶があるからです。
みうけんの当時の彼女も、このいしいさやさんのように母親とそろってエホバの証人でありました。
また、信仰を持つまいとする父親との間で葛藤に揺れ動いていました。
彼女とは、高校のころに出場したとある全国大会で知り合い、住所を交換して文通から交際へと発展していきました。
自由に外出できない彼女のもとへ、毎日のように電車で2時間も3時間もかけて会いにいき彼女の仕事の後にわずかな時間のデートを楽しんだものです。
しかし、最終的には決して踏み越えてはいけない一線である「異教徒との関係」をもったことが、教団に発覚した事により彼女とは連絡が取れなくなってしまいました。
きっと、教団の保護下に置かれてしまったのでしょう。
最後に彼女は言いました。
「家族で軽井沢へ引っ越す事になった」と。
彼女が本当に軽井沢へ行ってしまったのか。
それともみうけんと会う事をとどまるための方便だったのか。
今となっては知る由もありません。
それでも、今思えば異教徒でありサタンと呼ばれてもおかしくないみうけんと交際をしていたことは、いしいさやさんが最終的に教義と信仰生活に疑問を持ち、信仰から離れて行ったように・・・
彼女なりに一般社会との接点を求めていたのかもしれません。
当時、みうけんも若かったです。
社会の事も知らず、世間の事も知らずに若気の至りを尽くしましたが、そんな苦い青春時代をまざまざと思いださせてくれる一冊でした。
いま、あの彼女はどうしているだろうか。
信仰を守っていてもよし、自らの道を歩んでいてもよし。
健康で幸せな人生を歩んでくれていたら良いなと、しみじみと思いながら読んだ一冊でした。