なつかしの渋谷。2ヶ月前までこの街で働いていました(現在は人事異動により違う街へ)。
街に溢れる外国人観光客、立ち並ぶ高層ショッピングモールの群れ、どれもなつかしい風景ですが、それでもたまに妻ちゃんと訪問しています。
この日は「お寿司が食べたいね!」という話になり、そういや最近できたばかりで気になっていたお店を訪問してみようと思い立ちました。
そのお店は、渋谷駅のスクランブル交差点より徒歩5分、Vort渋谷の9階。
1階はカジノが入るビルで妖艶な雰囲気がしていますが、この9階に新しくオープンされた本格の江戸前鮨の銘店。
その名も、「渋谷 鮨 神南」さんです! 入り口はちょっと分かりづらいけれど、確かな腕前の美味しいお店ですよ。
この店を仕切っておられるのは、お鮨ひとすじ40年という、経験豊富な大将。
確かな目利きと食材に対する愛情は並々ならぬものがあり、一貫一貫を丁寧に握ってくださるお姿を眺めているだけで、こちらまで勉強になります。
店内は明るく、白を基調としたまとまりのある落ち着いた設えで、本当に落ち着きます。
スタッフさんもつかず離れず気の利いた接客。その反面でオープンキッチンのカウンターは大将の手練れをじっくりと見学させて頂くのにピッタリ。
◆【夜】おまかせコース(18000円)
メニューは昼、夜ともにコースが1種類ずつなので、自然とこのコースになります。
昼は夜よりリーズナブルですが、夜は夜で贅を尽くし、このお店の素晴らしさをじっくりと堪能できるおまかせのコースです。
◆獺祭23(グラス:2100円)
日本酒がお好きな方なら、知らぬものはいないであろう獺祭シリーズ。
1合だと4000円、ボトルだと12000円ですが、少しずついろいろ楽しみたい方はグラスがオススメ!
「23」はお米の磨きが2割3分という、究極の磨き加減ということらしいです。
お口に含んだ瞬間にスッと立つ香りはあくまでも滑らか。その反面で力強い飲み口がお鮨によく合います。
◆会津金山天然水 青ラベル(500円)
こちらはチェイサーとしてお願いしたお水。
1日に限られた量しか採取することができない貴重なお水で、このお水を選ぶところがさすが!
◆前菜:のれそれ ポン酢ジュレ
のれそれって、てっきりアナゴの稚魚かと思っていましたが、こちらではタチウオの稚魚とのこと。
ふーむ、アナゴのものは食べたことがありますけどね、タチウオのは初めてだね! そして器が涼しいね!
なるほど、リフトアップしてみると確かにタチウオの形をしています。
噛むごとにモノスゴい甘さとトロットロがあふれて、言われなかったらイカのようにも感じるかも?
これは生まれて初めて食べる美味しさで、一皿目でコレとは・・・否応にも期待がガンガン高鳴りますよ!
◆前菜:ワラビ イソツブ カニミソ
なんとも日本酒に合いそうな、豪華なおつまみの3点セット。
もうこのビジュアルを見ただけで冷酒(ヒヤ)が欲しくなってしまいます!
ワラビは、まさに採れたてという感じがします。
乾燥させたのを戻したものはよく食べますが、生ワラビというのは実に貴重だと思いますよ。
噛むほどにシャキシャキとした食感がたまらなくて、深山の中で育ったような野生的な味わい。
噛んでいると中からトロみが出てきて、これは乾燥品では味わえない、生ならではの美味しさです。
続いて2品は、イソツブとカニミソ。
もう、これだけでお酒がガンガン進んでしまう魔法のおつまみ! そんなに飲ませてどうするの!
まずはカニミソからで、しっかりと蟹の身が乗っていて、これだけで大吟醸が1合はいけちゃうわ!
お口に含むと、カニならではの芳醇な香りと甘〜いヨロコビがお口の中に広がって、まさに至福!
イソツブもつるりと殻から外してプリッと食べてみると、実にむっちむち。
貝ならではの旨味がギュッと濃縮されていて、これぞ海の恵みといった感じです。
◆前菜:焼き稚鮎 吸汁
出汁の中にジャボンしてしまった新潟の稚鮎。この発想はなかなか楽しいです。
なんといっても、この出汁がアッツアツですんごく美味しくて、まさに「お出汁ぃぃぃぃっ!!」って感じ。
稚鮎もコンガリと焼かれていて、実に香りが良いです。
シャクッ、シャクッと食べてみるとお口の中にしっかりと広がる川魚の香りで、これはヌル燗が欲しくなる味わい。
◆刺身:初ガツオ 和からし
おおっ、初ガツオ! かつて江戸では「初ガツオは女房を質に入れてでも食え」と言われたとか、言われてないとか。
でも当時は非常に高価なもので、庶民の憧れであったようですね。
和からしを出汁で割ったものが添えてあり、カツオの酸味と香りがすごく引き立ちます。
噛み締めるごとにお口に広がるカツオの力強い風味は、まさに春の訪れを知らせてくれる逸品。
◆替鉢:ホタルイカの炭焼き
富山湾のホタルイカで、全部メスなんだそうです。
卵をたっぷりと含んだプリプリさんを、実に香ばしく炭焼きに仕立てた逸品。
かぶりついてみると炙った香りが本当に良くて、身もプリップリな食感が素晴らしいの!
最初は何もつけずに素材の味わいを楽しみ、後半は山椒をつけて食べると、山椒がホタルイカの香りをより一層引き立ててくれています。
◆江戸開城 純米吟醸原酒 山田錦(グラス:1200円)
1合だと2000円。なんと、東京芝にある東京港醸造という酒蔵で作られたお酒です。
スーッと飲みやすく、まろやかな口当たり。かつ、力強さが残る日本酒。
東京で作られたお酒なので、江戸前寿司に合うのかもしれませんね。
ここで、この日に使うお魚さんをお披露目ですが、どれもテリッテリ!
どれもその日その日の最高のお魚を目利きし、仕入れているので内容は日によって変わるのだとか。
また、お鮨のもう一つの要となる舎利は江戸前寿司の原点となる赤酢と、白く輝く米酢を独自にブレンドしたもの。
握り加減もちょうど良く、噛めば噛むほどお口に広がる濃厚な味わいと甘味、酸味、香りは実に秀逸だなぁと思います。
◆握り鮨:中とろ
まずは現代の江戸前鮨の定番の中の定番、中トロさんから!
一口でいただくと、お口の中でシャキッととろけて、目をつぶっちゃう美味しさ!
お口の中に押し寄せる旨味と脂の余韻がすごすぎて、これは永遠に噛んでいたい美味しさ!
◆握り鮨:ヤリイカ
飾り切りも美しく、噛んでみるとサックサクと歯切れも良いです。
シャクシャクとねっとりのバランスがよく、さすが旬の食材だけあって美味しいです。
◆握り鮨:なめろう
あまりの美味しさに、皿まで舐めてしまう事から「なめろう」。
食べてみると、鯵がねっとり・薬味シャキシャキ・味噌がガツンと聞いていて、どれもしっかりと力強い美味しさ。
この3種のネタのバランスが実に良くて、上品なのに違う旨味が楽しめるのが実に考え抜かれているなぁと思います。
◆焼き物:サワラ 西京焼き
やったー、サワラ大好き! 西京焼きはもっと好き!
見ただけでわかるムッチリな身には脂がテリテリと輝いていて、これは美しいですねぇ。
箸でサクッと割って食べてみると、もんのすごく濃厚な脂の甘味と旨味。
ギュムッ、ギュムッと噛み締めるごとにぶつかってくるお魚の旨味と西京味噌のコクの組み合わせは本当に最高!
◆握り鮨:赤貝
板前さんが目の前でパチン! と叩いた瞬間、キェェェェェェと動く赤貝さん。いたそー。
さっそくハムッと頂けば、甘くてコリッコリな歯触りの奥から、しっかりとした海の香りを楽しめます。
◆握り鮨:ヒラメ
個人的にお刺身の中では女王様だと思っている、ヒラメさん。
韓国で天然のお刺身を爆食いしてから、大好きになったお魚です。
こちらのヒラメさんは実にモッチモチで、食感は力強いのにあくまでも上品な味わい。
◆握り鮨:大トロ
キター!! すっかりブッ壊れてしまった、美味しそうな崩れ大トロ。まさにトロの溶岩流!
落とさないように気をつけて食べてみれば、まったく芸術的。
あんまりにも甘くて、旨味がものすごくて、ほんとマグロの脂ってなんでこんなに美味しいのか!
ほのかに人肌の舎利とも相性が良く、噛めば噛むほどトロける美味しさは、本当に本当に本当に言葉がないです!
◆揚げ物:のり天ぷら ウニのせ
大将から直接に手渡された、アッツアツの海苔天ぷら。なんとウニが乗っています。
正直、これはオリジナリティがすごくあって楽しいですよね。みうけんも初めて食べました。
海苔カリッカリ、ウニふわっふわ、トロットロ、甘っあま。そしてわずかに振った塩が実に良い感じです。
お口の中に広がる海苔の香ばしさ、ウニの甘さはもう天下逸品!!
◆小丼:いくら丼
目の前で豪快に盛り付けされた小丼は、自家製のいくらの醤油漬けがたっぷりな、まさに宝石箱。
ツヤッツヤないくらとふっくら舎利を食べてみると、醤油の加減もちょうど良くて、いくらの弾力がすごいんです!
いくらが新鮮でなかなか割れないけど、割った後に皮が残らないのは本当に良いいくらの証拠なんだとか。
◆逸品:蒸し鮑の肝あえ 石焼リゾット
特注でこしらえたという石焼鍋がカンカンに熱せられてやってまいりました。
飛び跳ねますからとエプロンをいただき、ワクワクしながら事の成り行きを見守ります。
するとヒタヒタの汁に浸かった蒸し鮑がジュバァーーと注がれ、すぐにグツグツ言い始めました!
待てずにちょっと味見しましたが、この汁が鮑の肝がしっかり溶け込んでいて、これは美味しいのよ!
一口大に切られたアワビも、コリッコリ・プリップリで食感がすごく良いです。
アワビは肝が肝心、身も肝心。食感もよく、味わいもよく、見ていても楽しいお料理は、ここ「神南」さんならでは。
◆握り鮨:金目鯛
さぁ、再びお鮨のターンへ! まずは金目鯛ですが、目の前で豪快に炙ってくださいます。
この炙りが、金目鯛の美味しさを最大限に活かしていると思うのよね。
炙っている事ですごく香ばしくなり、上からかかったスダチと塩が金目鯛の味わいをサッパリ引き立ててくれています。
◆握り鮨:穴子
見ただけでその軟らかさが分かる、ふっくらなアナゴにテリッテリのツメ。
フワトロな身は食べていても全く引っかかりがなく、お口の中でスイスイとろけて無くなります。
正直、47年の人生の中で、これほどまでに滑らかなアナゴは初めてです。
◆握り鮨:車エビ
〆の握りは、なんとエビ業界の若頭である(どんな世界や)車海老さん!
身はシュッとしているのに、むっちむちな筋肉質で食べ応えも味わいも良いアニキです。
戯言はさておき、さっそく食べてみると一口におさまらないボリューム感!
さすがに甘くて、肉質もシャッキシャキ。かなり肉厚で食べ応えがあって、これは〆にふさわしい一貫でした!
握りではないですが、ちょいちょい摘んだガリは実にスッキリとした美味しさで好きですねぇ。
赤酢ではなく白酢なのでサッパリと美味しく、お魚の脂をよく引き締めてくれる美味しいガリでした。
◆お椀
シジミのお味噌汁は、しっかりと味わい深い赤出汁。
シジミの出汁がしっかりとしており、赤出汁の野生的な美味しさとも相性が良くて、心の底からホッとできる逸品です。
やはり日本人は・・・というと、また「一括りにするな」と怒られてしまいそうですが、あえて言います。
味噌汁とご飯と魚は、日本人には無くてはならないと思います!
◆水菓子
最近の若い方には通じないかもしれませんね。水菓子とは果物のことです。
この日は、やはり旬の食材ってことでイチゴさんにコンデンスミルクをかけたもの。
品種名などは聞きませんでしたが、見た目で分かる高級なイチゴさんです。
サクッといただくと実に甘い! コンデンスミルクがいらないほどに甘くて美味しいイチゴさんです。
これがシャーベットとかアイスだと、美味しいお寿司の余韻を壊してしまいますが、水菓子であればそういう事がないので安心していただけます。
◆◇◆後記◆◇◆
今回も、実に大満足。正直、この立地とこのコースで18000円はコスパが最高に良いなと思います。
店内も落ち着いた内装で、スタッフさんの接客も丁寧で不満な所が一切なく、ちょっと厳しそうな大将は実際に話してみるとすごく気さくで、話しやすい方でした。
その反面、お寿司に対しては全く妥協がないところが握っている時の表情に表れているなぁと思います。
逸品逸品、長年の経験の元に計算し尽くされた美味しさ。
お話していると実に勉強になるのが、大将のお話の引き出しの豊富さ。
やはり、お料理も接客も第一線に活躍されている方だからこそ、こちらも学ぶものが実に多いなと思いました。
渋谷には美味しいものが数々集まりますが、渋谷の街の喧騒を離れて心から落ち着き、美味しいものを楽しめる空間。
それがここ「渋谷 鮨 神南」さんで、誰を連れてきても決して恥ずかしくないお店です。
渋谷の街で美味しいお鮨が食べたくなった時は、渋谷モディ裏のビル9階にある「渋谷 鮨 神南」さん。
オススメのお店です。
お試しを!
再訪希望値:★★★ 是非とも行きたい
【ほしいものある?】
※食べログでは表示されません
★☆食べログもごひいきに願います☆★
渋谷 鮨 神南 (寿司 / 渋谷駅、神泉駅、明治神宮前駅)
夜総合点★★★★★ 5.0