イタリア料理でもなく、フランス料理でもなく、中華料理でもない。
ましてや日本料理でもない。その名は、江戸料理(日本料理ではあるけれど)。
江戸時代の食文化が、令和の時代に楽しめるなんて・・・
食通で知られた池波正太郎先生の「鬼平犯科帳」ファンとしては、これは是非とも試してみたくて、ずっと行きたかったお店です。
以前、ここ一石三鳥グループの焼き鳥屋さんにお邪魔して、そのオーナーさんのインスタをチェックしたら面白そうな方でしてね。
お殿様の衣装で馬に跨いで疾走する動画とか載っていて、一気に気に入ってしまったわけです。
このオーナーが、江戸料理のお店を出したとか・・・
さもあろう。これは行くしかないであろう!
この度、念願かなって訪問した「江戸料理 一石三鳥」さん。
2023年7月11日にオープンされてから、ずっと気になってブックマークしていました。
場所は六本木駅から西側に5分くらい歩いた地にドドーンと現れます。
お店の入口を飾るのは徳川家の葵の御紋!!・・・によく似た鳥の御紋w
脇の入り口は、重厚な扉でした。
店内はひょうたんを縦切りにしたような変わった形のカウンターがあり、その真ん中では炉端焼きがイ~ィ香りさせてます。
★−「江戸料理 一石三鳥」さんの三大おすすめポイント−★
1、ありそうでなかった「江戸料理」という新しいジャンルを楽しめる。
2、都内の名店の中でも上級の雰囲気で外国人の方からも大人気。
3、静かで落ち着きのある隠れ家ちっくなお店ながら、金曜日のゴールデンな夜は午前3時までバーに。
ドリンクメニューも豊富で、日本酒はもちろん特級のさらに上をいってます。
ワインやビールなどもなかなかに豊富。
さて、今回予約していたのはお手軽かつ人気の「蒼天コース」(15590円→13800円!)。
囲炉裏でじっくり仕上げた焼物や、彩り豊かで繊細なお料理がこれでもかと楽しめる「江戸料理堪能コース」だそうです。
メニューは毎月変わり、今回は8月だったので「葉月の献立」。
■白穂乃香(980円)
難関のテストをヘて、特別に許されたお店にしか置かれないという幻のビール。
うーむ、ビールなのにクリーミーでふんわり。
コクがあるのにあっさりですねぇ。
ラガーばかり飲んでいる身としてはなかなか珍しい、でも病みつきになる美味しさ!
■凌ぎ 蕎麦・蕃茄・大葉
いきなり蕎麦切りかい! と思いましたが。
せっかちな江戸っ子気質に合わせて・・・とのこと。
こちとら江戸っ子じゃなくてハマっ子だけど、蕎麦は好きだからいいんだぃ!!
てやんでぃ! べらぼうめ!
とても綺麗なビィドロ(ガラス)のお皿に入った、美しいお蕎麦。
なんと手打ち蕎麦で、キュッキュッと歯に響く歯応えが実に嬉しいです。
蕃茄(バンカ)はトマトの古い呼び名です。
蕃は夷狄を、茄は茄子を表します。江戸時代はもっぱら観賞用の植物だったそう。
これをマイナス50度でシャーベット状にしたものと、湯むきしたものが乗ってます。
上にはおろしと大葉がたっぷり乗って、スッキリサッパリと頂けますねぇ。
■前菜 熊・枝豆豆腐
枝豆豆腐の上に、なんと北海道産ヒグマのしゃぶしゃぶ! これは珍しい。
熊なんて、小さい頃にバァさまに「くまのい」飲まされて以来です。
上にはカラスミパウダーがかかっていて、こってりとした味わい。
熊そのものは意外とケモノ臭かったりせず、あっさりしています。
枝豆豆腐は柔らかいのに、枝豆の風味がしっかり。
お互いの旨味が見事に調和している印象。
■椀物 鱧・翡翠茄子・隠元
一見して地味なお椀だな、と思ったら裏側が豪華な特注品。
贅沢品禁止令が出され、目立たない裏地でオシャレしていた江戸っ子に思いを馳せて作られた粋なお椀です。
このフタの一枚一枚が違うデザインなんだそうで。
こういう遊び心がものすごく楽しいのは、オーナーさんのセンスでしょうか。
フタを開けるとフワッと立ち上る、お出汁の芳醇な香り。
翡翠茄子は、皮を剥いた茄子でトロリと柔らかく、そしてじゅわじゅわです。
丁寧に骨切された鱧を練り込んだのは、飛龍頭(ひりゅうず)。
飛龍頭は、いわゆるガンモドキ。
しっかりと出された香しい出汁が一気にお口じゅうにひろがるわ!
さらに、ガンモドキに染み込んだ出汁がじゅわじゅわで、これは実に素晴らしい。
■造里 鮮魚のお造り
醤油ではなくて、煎り酒というのが面白い!
酒で梅干しを煮た煎り酒は、江戸時代に醤油が普及するにしたがって幻になってしまいましたが、それまでは一般的な調味料でした。
さもあろう。
塩分が少なくてスッキリしていながら、適度に梅の酸味を感じるのでお刺身の味わいがよく活きてきます。
お刺身はイシガキガイ・マツダイ・勝浦のカツオの藁焼き。
しっかり厚切りの身は食感も肉厚、お口に香る藁の香りが最高です。
この煎り酒との相性もバツグンです!
イシガキガイ、なんとまだ生きていて身がうねうねしています。
もちろん甘くて、コリコリシャッグシャグな食感が素晴らしい!!
マツダイはねっちりと濃密な食感から溢れる甘さと旨味がたまらない。
まさに磯の荒波に揉まれた、力強さを感じる逸品。
江戸と言ったらカツオだ、べらぼうめ!
ついさっき、大炎上する藁の火で炙られていました。
■焼物 岐阜県長良川産鮎端焼き・鴨 味噌麹幽庵焼き
さっきまで目の前で焼かれていたアユさま。
むふーん、ふっくらした身に焙られた炭火の香りがしっかり。
タデ酢につけていただくと、なおさっぱり。
お魚好きとしては1ミリも無駄にできなくて、頭から全部たべちゃいました。
カモはギュギュッとした食感がうれしくて、しかもこってりとした味噌麴の味わいが濃厚で、ついつい食べ過ぎてしまいます。
江戸時代に美食家である北村祐庵という茶人(美食家)が発明した食べ方だとか。
祐庵さん、あんたはエラい!!
もう美味しすぎて、八百屋お七が口の中で半鐘ジャンジャン鳴らしているかのようです(わかるかな)
■新政 陽乃鳥(グラス:90c c:1880円)
やっぱりね。この一杯は間違いない。間違えようがない。
日本酒なのに、ワインのごとき。
この美味しさ、論ずるに術がござらん。
■揚物 煮穴子と玉蜀黍の印籠揚げ
ふっくらに煮られたアナゴに、かつらむきしたトウモロコシをかぶせて揚げたもの。
パリプリなトウモロコシと、ふっくらなアナゴのアクセントがいい!
上には金箔がかかった贅沢なあしらいで。
この印籠が目に入らぬか! ひかえおろう! と言われてるようです。
へへ~っ。
■食事 鰯と白瓜の土鍋ご飯 香物赤出汁 香物
どっしりした土鍋で運ばれてきた土鍋ごはんは、もうね。
炉端で焼かれた鰯がすき込んであるんですが、たまらない美味しさよね。
鰯はまったく生臭くなく、しかして江戸前の青魚の旨味をガンガンにあふれさせています。
ごはんは味がしっかり染みていて、いくらでも食べられてしまうわ。
白瓜はフワッと柔らかくて、そして甘くって。
「余ったらお持ち帰りできますよ」ですって・・・??
このうつけモノめが、余るわけがなかろう!! ガハハハハ!!
赤だしはしっかりと出汁が効いています。
具材がネギと海苔ってのが気が効いてるじゃないか。
■甘味 自家製イタリアンプリン・酒粕ジェラート
イタリアンプリンもっちり。ジェラートすっきり。
ここで安易にアンミツとか白玉に走らないところが、かえっていさぎよいです。
◆◇◆後記◆◇◆
こちらのお店は、時代劇ファンとしては垂涎の江戸料理ということで、期待ワクワクで伺いました。
もちろん当時の食事情などがどういうものか、ネットや本でしか伺い知ることはできないのですが、少しでもその雰囲気を体験できたような気がします。
なんだか、今にも奥の座敷から二本差しを刺した羽織姿のお侍さまが出て来そうで、ワクワクしっぱなしでした。
スタッフさんも終始笑顔で、お料理の説明も長すぎず短すぎず、みうけんのような素人にも分かりやすくて秀逸なり。
この「江戸料理 一石三鳥」さん、時代劇ファンならずともなかなか楽しめるお店です。
300年前、400年前の人たちはこういうのを食べていたのかなぁ、と想像の世界を膨らませながら美味しい冷酒(ひや)をキュッと傾ける、そんなオトナな空間がここ「江戸料理 一石三鳥」さんにはあったのでした。
もう、気分はすっかり鬼平犯科帳の主人公・・・で、あるか。
あんな粋な生き方に、少しは近づくことが出来たであろうか。
お試しござれ!
再訪希望値:★★★ 是非とも行きたい
【みうけんさんおススメの本もどうぞ】
※食べログでは表示されません
★☆食べログもごひいきに願います☆★