みわみわ・太地大介・小池たかし・どおくまんプロ「なにわ遊侠伝」1〜25巻 完結
なにやら作者名がすごいことになっていますが、どおくまんプロに代表される主力作家陣が勢ぞろいしています。
もともとは「週刊アサヒ芸能」で連載された極道ものの漫画ですが、切ったの張ったのという血みどろの表現はあまりなく、楽しんで読める漫画です。
大阪の暴力団、金州組に若衆見習いとして入ることとなった暴走族の少年・山田英二と福永誠。
若衆のサブに連れられて組へやって来た二人に対し、組長・金州金太郎は町内会の人たちから愛されるよう奨励する。ケンカとは無縁の金州組で二人が最初に任されたのは事務所の掃除と車磨き。
だが若頭補佐の成田美知男が大のクモ嫌いだと知らず、クモ退治をしなかったため大騒ぎに……。
基本的にお笑い要素満載、スケベ要素満載、およそ現実世界にはなかったであろう、ふざけた話ばかりな純粋なギャグマンガです。
その中にも泣けるシーンもあり、ボケてしまった他の組の組長が亡くなり葬儀に行った時、「これで肩の荷も降りたやろ」と労をねぎらう金州組のメンバー。
そんな彼らに、「たしかに、親父(組長)がボケてから、ワシら苦労の連続でした。裸で出歩くわ、おもらしはするわ・・・しかし、それでも親は親。ワシら若いころにさんざ面倒見てくれた親を亡くして、悲しまない子供はおりません」と反論し、涙を流しながら絶句する金州組のメンバーら。
また、極道も社会に適応するべく有休公休を出すと組長が決めたが、なかなか従わない特攻隊隊長の開門。
雪の降る日、組長の自宅の庭には組長を守るとの信念のもと、ひとり日本刀を抱えあぐらをかき続ける開門の姿を見て、組長は1人涙する。
そんな人情物のストーリーも含まれています。
いま思えば、昭和のころや平成の初めまでは、まだヤクザにも「市民権」はあったと思います。
昭和のころは任侠もの、極道ものの映画シリーズが人気を博し、また当時の大人気番組「ドリフ大爆笑」や、その後継となった「加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ」などでは、頻繁にヤクザもののコントがあり、本物のヤクザをエキストラに使ったりしていたそうです。
今では暴力団に対する見方も変わり、テレビに出すことすらタブーとなってしまいました。
もちろん、数々の犯罪行為を引き起こし、カネ集めのためなら手段を選ばない反社会集団は許されるものではありませんが、そんな連中ですら笑いのタネにしてしまう大らかだった昭和の時代が懐かしく、なんでも規制規制と臭いものにフタをする現代が、たまらなくつまらなく思えてしまうのであります。