本日の映画鑑賞です。
今日の映画は冷戦終結後の1990年(平成2年)公開となるアメリカ映画「レッド・オクトーバーを追え!」(原題:The Hunt for Red October)です。
この映画はもともと、トム・クランシーによる同名の小説を元にして作られたアメリカ映画で、最新鋭の潜水艦をめぐるソ連とアメリカの謀略合戦、工作合戦、そしてまさに水面下での緊迫した闘いが、観客を全く退屈させることなくハラハラドキドキさせてくれる秀逸な作品だと思います。
正直、ネーミングからしてまったく期待してなかったんです。
「レッドオクトーバーを追え」なんてさ、まるでサンダーバードかエアーウルフなみのベタベタなアメリカンC級映画っぽくない?
だから、正直あんまり期待はしてなかったですが、実際に観てみたらなにこれ!!
すっごく面白かったのよね。
舞台は冷戦真っ只中の1984年11月。
ソ連海軍きっての名艦長であり、経験も政治的コネクションも豊富な潜水艦艦長であったマルコ・ラミウス大佐(ショーン・コネリー)は、アメリカですら開発を断念した最新鋭にして最強のタイフーン級原子力潜水艦「レッド・オクトーバー」の処女航海に出発します。
潜水艦でも航空機でも戦車でも、エンジンを回して推進力を得るにはどうしても「音」が発生するもの────。
特に潜水艦では、目視での索敵が困難であるためにいかに敵潜水艦の音を察知し、また味方潜水艦の音を静かにするかに重点が置かれて来ました。
そんな中、アメリカですら開発を断念した超静音航行システムである「キャタピラー・ドライブ」を搭載した新型潜水艦をソ連が極秘裏に開発、まだその存在すら秘匿したまま処女航海を果たします。
しかし、ラミウス艦長は政治将校のイワン・プーチンを事故に見せかけて殺害。
アメリカ東海岸でミサイル訓練を行うという嘘の命令を艦内に伝えたラミウス艦長の真意は、ソ連の政府に嫌気がさしたことによってアメリカに亡命することだったのです。
信頼する部下とともに慎重に亡命計画を企てて実行してきたラミレス艦長。
しかし、ラミレス艦長自ら亡命意志を伝えたことによりソ連政府からは目の敵にされて追われる身となり、さらに艦内には亡命を阻止しようとするKGB工作員が隠れておりレッド・オクトーバーの推進装置を破壊され、計画は狂い始めるのです。
進退極まるラミレス艦長とその部下たち、最新鋭の潜水艦を手に入れつつ亡命者を迎え入れたい、しかしソ連との全面衝突は防ぎたいアメリカ政府。
それぞれの立場の男たちが、それぞれの立場で攻防を繰り広げる。
この作品の見所は、なんと言っても「潜水艦」という一般人にはおよそ知り得ない世界。
潜水艦同士の探知合戦、ふだんはあまり意識しない「音」にたいする気の使いようなどが余すところなく「体験」できるかのようです。
そして、こうやって見る限りでは潜水艦の中って意外と広いんだなぁ、ということ。
以前、広島の呉で退役した自衛隊の潜水艦に、また韓国の東海岸で展示されている北朝鮮のスパイ用潜水艦の中に入ったことがありますが、やはりその中は狭く、何回頭をぶつけたことか。
単に映画の中で映し出されるシーンが偉い人ばかりの居住スペース ということも居住スペースが広く感じられる一因かもしれませんが。
見所は最後の方で、ソ連原潜レッドオクトーバーと、それを追うソ連原潜、さらに亡命説を信じるか、それともレッドオクトーバーを撃沈するかで揺れるアメリカ海軍の駆け引きがすこしも退屈させることなく、話の展開は見事。
さらにソ連原潜の艦長を、レッドオクトーバーの乗組員だけを逃して自爆、ソ連の国家機密を守った英雄と仕立て上げる策略にもびっくりしました。
なるほど、そうすればソ連に残された艦長の親族(いるかどうかわからないが)は反逆者の汚名を着せられるのではなく英雄として振る舞えるし、アメリカはソ連から原潜の返還要求を受けることもない。そして、亡命したラミレス艦長にKGBの刺客が差し向けられることもない。
このような咄嗟の判断が緊迫した状況下、しかも深海のなかの潜水艦内という特殊な環境のなか。
しかも、亡命を快く思わない乗組員による妨害工作まで始まっちゃって、この短時間にスリルとハラハラとドキドキが次々と繰り広げられることがこの映画の最大の醍醐味だと思います。
そして、この映画で最高の演技と貫禄を見せてくれた名優ショーン・コネリーの偉大さを、改めて知った一本となりました。
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