土田よしこ著「つる姫じゃ~っ!」1~11巻(完結)
「週刊マーガレット」で1973年から1979年まで連載された・・・って、もう40年も前か!! マンガです。
単行本はオリジナルのマーガレットコミックス版が全11巻(集英社刊)、愛蔵版全3巻(中央公論社刊)、中公文庫コミック版の文庫版全6巻(中央公論社刊)それぞれ出版されているようですが、今ではプレミアがついているかもしれません。
舞台は「たぶん日本」、時代背景は「テキトー」な設定。
「ハゲマス城」の姫である「つる姫」と、殿、家老、クラスメイトたちが織り成すハチャメチャで楽しい、でも時にほの悲しいストーリーのギャグマンガです。
しっかし、この姫さまがね~~。きったね~~~~~~んですよ。
風呂は入らない、手はヌメヌメ、歯は磨いたことなくて虫歯にネギがはさまって、かかる病気も発疹チフスだのコレラだの・・・
で、クラスのみんなにゃワガママいって、城の家来たちにもワガママいって、どうしようもないんです。
それでも、不思議とクラスメイトと喧嘩しながら不思議と輪に入ってるし、先生には竹のムチでしごかれながらも心配されてるし、家老の精気も給料も吸い尽くしておきながら家老には愛されてしまい、家老の奥さんが嫉妬する始末。
そして、意外と恋愛上手なのです。
最後はどれも実らぬ恋となるのですが、薬売りの少年と相思相愛になったり、他のお城の若君と見合いをして意気投合したり、クラスメイトと仲良くなってみたり。
意外と家庭的な一面もあって、関節炎に悩む家老に手編みのタビ(本当は手袋を編もうとしてタビになった)をプレゼントしたり、ちょっと買い物いってみれば夏を涼しく過ごそうと風鈴やすだれを買ってみたり、お城の家来に手料理をふるまってみたり。
そして、良いアクセントになっているのが女中のイネさんでしょう。
イネさんは女中でありながら岩をもくだく腕力と、その胆力でさしものつる姫もまったくかないません。
かなり飛び出た鼻毛と、おせじにも美人とは言えない風貌だし、三波春夫の大ファンであるなど若いのか中年なのかすら分からないのですが、このイネさんがかなりモテモテでいつもボーイフレンドをはべらせているのです。
当然つる姫は姫のくせに女中にまったく頭が上がらない、たてついても到底かなわないといういびつな権力関係が出来てしまっていますが、お互いに嫌いながらも一緒に温泉旅行に行ったりピクニックに行ったり、イネさんはつる姫の亡き母上を装って手紙とプレゼント(手紙がすごいクセ字ですぐばれる)を贈ったりしています。
ただのハチャメチャだけではなく、そして小学生程度向けのギャグ漫画でありながら、実に深い人間関係が描かれていますし、ピンクレディや山口百恵など当時の芸能のハナシも出てきて、昭和世代にはたまらない本だと思います。