みうけんのヨコハマ原付紀行

愛車はヤマハのシグナスX。原付またいで、見たり聞いたり食べ歩いたり。風にまかせてただひたすらに、ふるさと横浜とその近辺を巡ります。※現在アップしている「歴史と民話とツーリング」の記事は緊急事態宣言発令前に取材したものです。

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36匹が舞い踊る 群猿舞戯の庚申塔【藤沢市】

 

むかしむかし、まだ人々の信心が深かった江戸時代の頃は庚申講(こうしんこう)というものが盛んに行われていました。

 

当時の暦で「庚申」(かのえさる)の日の晩は、朝まで夜を徹して起きている日とされていました。

 

これは体の中に巣食う「三尸の虫」(さんしのむし)という虫が、自らが巣食う人間が行った悪事や嘘を閻魔さまに告げ口しに行くのが庚申の日の夜と信じられていたためです。

 

この日に人間が眠らないと、三尸の虫は体から抜け出せないために閻魔さまのところに告げ口ができなくなる、よって、多少の悪事は閻魔さまにバレずに極楽浄土に送ってもらえるであろう、という願いを込めて一晩中起きて語り明かしたり歌を歌ったりしたといいます。

 

この庚申講を何度か行うごとに記念に建立されたのが全国に見かける庚申塔という石仏で、無病息災・延命長寿に加えて五穀豊穣などを祈願しつつ、中心に青面金剛を据えた下には「見ざる・言わざる・聞かざる」の三猿を彫ったものが現代にもたくさん残されています。

 

この庚申塔については今までに当ブログで数々紹介してきていますが、なんといってもその特徴は「見ざる・言わざる・聞かざる」の三猿でしょう。

 

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この三猿は神奈川県の庚申塔にも多く残されており、今回は観光名所としても名高い江の島の事例を紹介します。

 

この庚申塔は江の島の中津宮から奥津宮に至るところにあり、「御岩屋道通り」と呼ばれる商店が居並ぶ一角にひっそりとたたずんでいます。

 

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この庚申塔は説明板によれば「群猿奉賽像庚申塔」(ぐんえんほうさいぞうこうしんとう)とされ、敬愛する歴史研究家の松浦豊先生は「群猿舞戯の庚申塔」と表現されています。

 

ちなみに、「奉賽」とは神社仏閣で祈願をし、その願いが叶った時にお礼に参拝する、いわゆる「お礼参り」の事をさします。


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この石塔は従来の庚申塔に比べて幾倍にも大きく、尖頭角柱型で塔身の高さ86センチ・幅は43センチ、台座も含めた高さは143センチにもなる花崗岩の石塔です。

 

残念ながら、いつ頃・誰によって寄進され、どのような経緯でここにあるのかは全く分かっていないそうです。


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もともと猿という生き物は、日枝山王神社の神様の使いとして親しまれてきました。

 

このことから、この合計36匹の猿もただの猿ではなく神に仕える神猿であり、それぞれが異なる艶姿で山王神の神徳をたたえている姿であろう、とされています。

 

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この猿たちの多くは烏帽子をかぶっているのが実に特徴的で、石塔の上の方にいる猿は雲のようなものに腰をかけて空に浮かんでいるようにも見えます。

 

まるで孫悟空が筋斗雲に乗っている姿を連想させるような、誠にユーモラスな猿たちです。

 

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1匹1匹をじっくりと眺めてみると、扇を振りかぶって踊る猿、なにか鈴のような鳴り物を構える猿、雅楽で使う「笙」(しょう)という管楽器のようなものを咥える猿、傘を広げて綱渡りする猿などが見て取れます。

 

また、その下には庚申塔の定番である「見ざる・言わざる・聞かざる」が陽刻されているのも見て取れます。

 

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また、下の方に「見ざる・言わざる・聞かざる」があるかと思いきや、別の面の下の方には木の先に紙垂を取り付けた「御幣」(ごへい)を構えて並んで歩く姿も見られます。

 

同じような動きをしている猿もいれば、対照的とも言えるほど違う動きを見せている猿もおり、これらの猿1匹1匹の動きにはおそらく何らかのストーリー性があったのかもしれません。


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この石塔には文字などが刻まれていない代わりに、一切の隙間を作らないようにびっしりと猿が描かれています。

 

江戸時代に編纂された一大歴史記である「新編相模風土記稿」には下之宮(現在の辺津宮)の絵馬堂の近くに山王社があったと伝えていますから、この山王社に奉納されたものではないか、という見方もされているそうです。


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また、この庚申塔の台座である基壇には蛇が巻き付いているような姿も表現されている、と説明板にはあります。

 

これは江の島の守護である弁財天の使いが蛇であるという言い伝えによるものと思われていますが、ただの模様のようにも見え、言われてみれば蛇のようにも見え、なんとも不思議な紋様だなと思います。


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いずれにしても、いままでいろいろな庚申塔を見てきた中で、正面に青面金剛を据えずに数多の猿の像のみを描いたものは実に珍しく、また猿1匹1匹の躍動感とユーモラスな動きは目を見張るものがあります。

 

これがどのような意図を持って建立されたものか、なにか信心深い寄進者のこだわりがあったのか、石工による発想なのか、その辺りは今となっては誰も知るよしがありません。

 

新緑の風が吹き抜ける江の島で、この庚申塔の前にひざまづき、今にも動き出しそうな猿たちを眺めていると、槌と鑿だけで一心不乱に石に向き合いつつ、この猿を掘り上げた石工の息吹が蘇ってくるかのようです。

 

ここにも人知れず流れていく、時の流れのはかなさを思い知るのです。

 

 

 

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