今日の映画です。
今回見たのは、1997年(平成9年)公開のアメリカ映画「セブン・イヤーズ・イン・チベット」(原題:Seven Years in Tibet)です。
ジャン=ジャック・アノー監督。
◆◇◆あらすじ◆◇◆
ナチス時代のオーストリアで、スイスのアイガー(高山)に初登頂を果たした登山家、ハインリヒ・ハラー(ブラッド・ピット)。
1939年、ナチスドイツの威信をかけて世界最高峰・ヒマラヤ山脈登頂を目指し、長い旅に出ます。
しかし、インドへ上陸した時点で第2次世界大戦が勃発。
当時インドを統治していたイギリス軍によって捕虜となってしまったハラーは、数回の失敗を経て脱走を果たし、流浪の果てにチベットへと流れ着いたのです。
チベットの首都であるラサで生活をするうち、当時14歳であったダライ・ラマ14世(ジャムヤン・ジャムツォ・ワンチュク)との交流を通じて、チベットの文化に深く触れることになります。
捕虜生活ですっかり荒れ果てた心と体を癒したラサの平和な日々は長くは続かず、やがて始まる中国人民解放軍によるチベット侵略がはじまり、新たな波乱が始まるのです───。
◆◇◆感想◆◇◆
この映画を見て、己の無知さを知りました。
映画に出てくる好奇心旺盛な14歳の僧。彼は映画の中で「猊下」(げいか)と呼ばれていたので良くわかっていなかったのですが、実はこの若き僧こそが、若き日のダライ・ラマ14世であったとは。
この映画の中では、まだチベットの指導者としてスタートしたばかりのダライ・ラマ。
しかし、このすぐ後に亡命を果たし、長く苦しい流転の旅の中から亡命政府を指揮しながら、ノーベル平和賞への道を歩んでいくとは、いったい誰が想像したでしょう。
ダライ・ラマは誰もが知る有名な人ですが、彼がどういう生い立ちを経て今に至るのか。
みうけんは、いままで考えたこともありませんでした。
まだまだ勉強不足と言わざるを得ませんねぇ。
それと、この映画のテーマの一つに世界最高峰を目指す登山家の話もあります。
みうけんは、正直言って登山というものが理解できないのです。
山を愛する人々のことを否定する気はないし、美しい山を否定する気もない。
しかし、ある登山家によって谷川岳というところに観光にいった時、たくさんの遭難者を悼むレリーフ(慰霊碑)が大量に岩盤に埋め込まれているのを見て、そこまでして山に登りたいものかと・・・
もちろん、他にもいろいろと理由はありますが、みうけんはイマイチ山というものに興味が持てません。
ですので、登山をするシーンではかなり退屈をすることになるし、なんでそこまでして山に登るのか・・・と思うのが正直な感想です。
その反面、興味深く見ることができた、この映画の見どころは、今では珍しくなってしまった「古き良き」チベット人たちの暮らし。
信仰の中に生き、自然とともに暮らしてきたチベット人たち。
そこにまずやって来たのが、中国の国民党政府です。
国民党政府はせいぜい「中国政府代表」の看板を掲げるくらいしかしないどころか、チベットに対する支配も「比較的」緩やかに描かれています。
しかし、国民党政府が引き上げた後に侵攻してきた共産党政府の横暴ぶりが、あまりにも目に余るものがあり、この対比がものすごい見せ場になっています。
現在の中国によるチベット支配の現状をみれば、当初から中国共産党政府と人民解放軍がチベット人たちを見下し、ただの侵略の相手、虫けらのような存在としか見ていなかったことは明白ではありますが、その重苦しく、胸が張り裂けるような現実が実にリアルに描かれていると思います。
よく、中国政府は核心をつかれるとヒステリックになって非難してきますが、実際にこの映画に関しても中華人民共和国の政府から強い非難があったそうです。
そればかりか、この映画「セブン・イヤーズ・イン・チベット」は今でも中国国内での上映が禁じられているばかりか、ジャン=ジャック・アノー監督や主演のブラッド・ピットなどは中華人民共和国が支配する地域への立ち入りまでもが禁止されるに至ったといいます。
いかに、中国政府がこの映画を問題視していたかが分かるエピソードであり、それだけ中国にとって痛いところを突かれた映画でもあるということです。
この映画は、まぁ登山に関して興味がないみうけんにとっては当初は退屈な映画でしたが、同時にチベット問題に興味を持つ身としてはなかなか興味深いものがありました。
映画であること、ある程度は脚色や作り話が混ぜ込んであるということも加味しながら、歴史の一幕を学ぶ材料として、興味深く最後まで見終わることができた映画でもありました。