今日の映画です。
今回見たのは、2012年(平成24年)公開の日本映画、「のぼうの城」です。
時は戦国時代後期。
天下統一を目前に控えた豊臣秀吉は、関東地方一帯を勢力下に収めていた小田原北条家に戦の駒を進めます。
このお話に出てくる、小田原北条家の配下にあった成田家の治める忍城は、実際に埼玉県に存在したお城です。
周囲を沼や田んぼに囲まれた珍しい城でしたが、戦の中心が徒歩と馬であった当時ではとても攻めにくい城であったことは作中でも語られ、戦の天才と呼ばれた上杉謙信でさえ攻め落とせなかった難攻不落の城なのです。
そんな忍城の城代(仮の城主)を務めるのは、成田家一門であった成田長親という人物で、この人物も実在したひとです。
ただし、この成田長親は実際には詳しいことはあまりわかっておらず、この作品中で「でくのぼう」として庶民から「のぼうさま」と呼ばれていた事など、多くは脚色した話が物語に色を添えているのです。
さて、そんな忍城も豊臣秀吉の右腕として辣腕を振るう石田三成率いる大軍2万の兵によってすっかり取り囲まれました。
成田長親は最初は開城する気でしたが、甲斐姫を側女として差し出せという豊臣側の要求に反発し、徹底抗戦の方針に転換します。
豊臣軍2万の軍勢にたいし、成田家側はわずか500騎。
そこに、「のぼうさま」を慕う領民が加勢し、また天然の要害と勇猛かつ智略に富んだ家臣たちの力によって、城を守り抜いていくさまがテンポよく描かれているのです。
正直、このお話は実在の城と人物を題材としていますが、話の展開はまったくのフィクションと思って差し支えないと思います。
上記に張り付けた予告編も「驚天動地の実話」なんて書いていますが・・・
まぁ時代背景や史実を気にしたら見られませんが、水戸黄門や暴れん坊将軍のように難しい事抜きにすれば、純粋に楽しめる映画だと思います。
また配役に関しても、成田家側は「のぼうさま」を飄々と演じる野村萬斎をはじめ、甲斐姫役の榮倉奈々、正木丹波守利英役の佐藤浩市、酒巻靱負役の成宮寛貴、柴崎和泉守役の山口智充など、どれも味のある濃ゆい俳優たちが目白押しなのが素晴らしい。
特に、武勇の誉高き柴崎和泉守役の山口智充!!
まるで、三国志の中から出てきちゃったんじゃないかと思わせる暴れっぷりです。
あの役はぐっさんにしか出来ないわ!!
また、初代「戦国自衛隊」で長尾景春を演じた夏八木勲(和尚役)に再会できたのも感動的でした。
その一方で、 石田三成率いる豊臣軍は、どれも味のある演技をする俳優が出ていません。
とはいえ、石田三成役の上地雄輔、大谷吉継役の山田孝之など、そこそこの名優が出ているのですが、これといった印象に残るコテコテさがないんですね。
一つ意外だったのは、カタブツで冷徹無比なイメージだった石田三成が、意外と話がわかる人間であったこと。
まぁ、これもあくまでもフィクションなのかノンフィクションなのか分からないところですが。
石田軍で唯一印象に残ったのは、攻城戦で足軽頭をしつつ、門を破って武功を立てた瞬間に焼き殺されてしまった名もなき隻眼の武将(笑
これは、成田家側の武将を観客に印象づけようとする、犬童一心・樋口真嗣両監督の作戦でしょうか。もしそうだとしたら、素晴らしい手腕だと思います。
なんといっても、成田家側はいち百姓(たへえ役:前田吟)ですら、ものすごい迫力ある演技をしています。
みうけんは、色んな映画を見てきた中で、最近まで味のある俳優は昭和にしかいなかった、平成期にはただかっこいいだけのペラペラした俳優しかいなくなってしまったのではないか、と嘆いていました。
しかし、改めて平成期に作られた映画を見ていると、このように味のある演技をする俳優たちは、まだまだ日本には数多くいるのだなぁ、と改めて深く感じることができる映画だったのでした。