今日の映画です。
今回見たのは、2016年(平成28年)公開のノルウェー映画である「ザ・ウェイブ」(原題:The wave)です。
これは正直、全く退屈しないスゴい映画であると思います。
場所はノルウェー。
北海道よりもずっとずっと北、緯度的にはカムチャツカ半島あたりという寒い国で、氷河の流れが大地を削り取って谷にしたという大自然の芸術、フィヨルドが有名な国です。
ノルウェーには大小合わせると数えきれないほどのフィヨルドがあるとされていますが、そのうちのひとつ「ガイランゲルフィヨルド」がこの映画の舞台です。
フィヨルドは、地面を深く削り取られたが故に出来た断崖絶壁がしばしば崩れ、巨大な岩塊が水面に落ちては大津波を引き起こし、人々を飲み込んできたという歴史がありました。
今回の舞台となる世界有数の美しさを誇る「ガイランゲルフィヨルド」でも、映画に出てくるような岩盤崩落と80メートル級の津波は、専門家たちによって「いつかは起こるであろう」と実際に警告されているのだとか。
そこで、地殻変動や岩盤の歪みを観測し、もし危険が迫った時には街に警報を出す観測班の仕事をしていたクリスチャン(クリストッフェル・ヨーネル)。
彼が転職を決め、違う街に引っ越すと云う日に地下水の異常な降下を観測し、やがて未曾有の岩盤崩落を起こすことを通じて、突如として巻き起こった80メートルという驚異的な大津波に、街も人々も、そしてクリスチャンとその家族までもが容赦なく巻き込まれていく・・・
この映画は、なぜか他の映画サイトでのレビューはあんまり芳しくはないようです。
荒唐無稽であるとか、現実味がないとか、そういったレビューが多かったように思いますが、
まぁその理由は人それぞれ、批評も人それぞれですよね。
みうけん個人的には、話の展開は退屈をさせず、常に不安感を煽り、ハラハラドキドキがずっと続く映画で、ストーリーもカメラワークもよく出来ているなと思います。
まだ津波が起きる前の平和な時間だって、雄大で美しい大自然の光景がたくさん映し出されるのでまったく退屈しません。
どこまでも美しく、日本人には馴染みがない白夜の珍しい光景。
そんな美しいはずの自然がだんだんと牙を剥き、巨大な地割れの中で調査員を飲み込んだかと思うと、一気に崩落して巨大な大津波を引き起こし、街中を飲み込んでいく。
実際にあると言われているからこそ、また常にその被害がシミュレーションされているノルウェーだからこそ、ここまで緊迫感があり、ここまで臨場感がある映像ができるのでしょう。
ストーリー的にはちょっと問題のある不仲な家庭が、自然災害にバッシャーンされて、家族同士が助け合って命からがらなんとか生き延びる。
そこで家族全員助かってなんとかハッピーエンドという、不幸からのスリラーハラハラ最後はハッピーな、典型的な欧米型映画の展開を見せてくれますが、それもまた安心感がある展開(笑)
この中で際立ったのは、
どんな逆境でも冷静さを失わず、家族に手をかけるものには容赦をしない母の強さ。
そして、津波にすべてをさらわれて不安のどん底にありながら、離れ離れになった家族を探すべく「必ず帰ってくる」と言い残し立ち去る父の言葉を信じ、安全地帯に一人残って父の帰りを待つ幼い娘。
もし、実際にこのような事が起きたら、父は娘を一人置いてどこかに行ってしまうかとも思うし、娘もいくら芯が強いとはいえ一人残るという選択はしないだろうなと思います。
このあたり、違和感があるだの現実味がないだの言われているゆえんかもしれません。
そんな中でも、特に深くうなずき共感したのが、警報を出すか出さないかとモメているときに、「何度も警報を出していると本当に危険な時に誰も逃げてくれなくなる」というセリフ。
どっかの国では、良否はともかく常に緊急事態宣言だのマンボウだのを出し続けて、すっかり国民がダレてしまった感がありますが、まさにその通りだなと思います。
つい数年前には日本にも巨大津波が襲いかかり、たくさんの尊い人命が失われました。
我々はそんな光景を目の当たりにした日本人だからこそ、この映画に出てくるような津波の恐ろしさから決して目を逸らさずに、津波の恐ろしさを後世に伝えていくべきではないかと思いました。