みうけんのヨコハマ原付紀行

愛車はヤマハのシグナスX。原付またいで、見たり聞いたり食べ歩いたり。風にまかせてただひたすらに、ふるさと横浜とその近辺を巡ります。※現在アップしている「歴史と民話とツーリング」の記事は緊急事態宣言発令前に取材したものです。

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住処を埋められた 悲運の池の大白蛇(横浜市都筑区)

川崎市宮前区との境にほど近い、都筑区東山田を原付で走りました。

住宅街に囲まれた、静かな山すその里に立派な山門を構えるのが、天台宗寺院である諏訪山 観音寺であり、安然上人によって平安時代前期の貞観年間(624年~649年)に開基されたという歴史のあるお寺です。

現在では、準西国稲毛三十三観世音霊場十三番、都築橘樹酉年地蔵尊霊場二十二番ともなっています。

  

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このお寺の歴史は深く、江戸時代に編纂された一大歴史史料である「新編武蔵国風土紀稿」の「都筑郡 神奈川領 山田村」の項には、

 

除地、一段歩許、字徳持谷にあり、多磨郡深大寺深大寺末、諏訪山と稱す、開山は僧安然にて貞観年中に開基せりと、本尊正観音立像にて長七八寸ばかり、客殿六間に七間半巽に向ふ、前に石階あり、境内山の裾に六尺四方許の穴あり、ここを入ること三間許にして又岩穴あり、二丁許を入る、其處は四坪ばかりが間清水たたへりとぞ、墓所に斷碑四枚あり、内に建武四年としるすもの一枚、餘は漫滅して定かによむべからず。

 

とあります。

 

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この観音寺の境内には、かつて池があったそうです。

面積ほどそれほど広い池ではなかったものの、あまりの深さに身の毛もよだつほどで、その中には、むかしから大きな白蛇が一匹棲んでいたと言われていました。

 

そんなある日、村の次郎兵衛という木こりが住職に頼まれて、その池のふちに生えていた樹齢数百年という大きな樫の木を切り倒そうとしていました。

 

すると、それまで穏やかだった空が急にどんよりと暗くなり、鏡のようだった池はたちまち渦となったかと思うと高々とした水柱が上がり、まるで全身を雪で包んだかのような真っ白な大蛇が立ち上がったのです。

 

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見上げるような高さから見下ろす大蛇は、炎のように赤い舌をペロペロと出しては、矢で射るような鋭い目つきで次郎兵衛を睨みつけていました。

一方の次郎兵衛はすっかり腰を抜かしてガタガタを震えるばかりで、逃げることも命乞いをすることもままなりません。

 

やがて白蛇は次郎兵衛を包んでしまうほどの黄色い息を吹きかけたかと思うと、次郎兵衛はそのままばったりと気絶してしまいました。

 

この一部始終を堂のかげから見ていた住職は、このような池を放っておいては、のちのち必ずや禍いとなるであろうと考え、村の衆から動けるものを皆集めて、池を埋めてしまったのです。

 

これで安心かと思いきや、その夜に住職の枕もとに白装束の白髪の老人が現れました。

老人は恐ろしい形相で「すみやかに池を元通りに掘り返せ、さもなくばお前の命をたつぞ」 と言い残して煙のように消えてしまったのです。

 

飛び起きた住職はあまりの恐ろしさに身をふるわせ、全身には冷や汗をびっしょりかいていましたが、それが夢であったことを知ると少し安心して眠りにつきました。

 

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しかし、その日からは住職の心のどこかにはいつも白髪の老人が引っかかっていて、なかなか忘れることができませんでした。

 

それから2、3日たったある日、住職が山田のガンゼヤブという家の裏を通っているとき、例の白蛇が突如として現れて住職を睨め付け、縮み上がる住職に向かって不気味に光る息を吐きかけたのです。

住職は一心に南無阿弥陀仏と名号を唱えましたが、祈りもむなしく、そのまま気絶してしまいました。

 

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その日を境に、いつも水をたたえていた野川の八幡様の水が止まってしまうという事がありました。

 

中には、「畑の帰りに真白いものが風を切り、目にも止まらぬ速さで空を飛んで八幡様の所に落ちたのを見た」というものも現れ、これはすなわち観音寺の古池の主が、住処を追われてお移りになったのだという噂で村内は持ちきりとなります。

 

村民のためを思ってしたこととはいえ、このような事態を招いてしまったのは自らの不徳の致すところと大いに反省した住職は盛大な供養をし、その主の霊を慰めました。

それからというもの、二度とこのような恐ろしいことは起きなくなり、住職も里人たちも末永く幸せに暮らした、ということです。

 

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せっかく訪問したので、本堂と無縁仏さまの前でお勤めをさせていただき、御朱印を拝受しました。

 

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スッキリとした筆致の爽やかな筆遣いが印象的で、御住職もお若い方なのに実に丁寧で仁徳のあるお方でした。

このようなご縁をいただけたことには感謝しかありません。

 

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いま、静寂に包まれた観音寺の境内をあるくとき、真新しく作り直された池の中を眺めると、そこにはかつて白蛇が棲んだという深い池のおもかげはありません。

 

ただ静寂と平和が支配する現代の観音寺の境内には、時折おだやかなウグイスの鳴き声がこだまし、昔日に恐ろしい出来事があったという名残は微塵にも感じられず、ここに時の流れの無常さをしみじみと感じたのです。

 

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