みうけんのヨコハマ原付紀行

愛車はヤマハのシグナスX。原付またいで、見たり聞いたり食べ歩いたり。風にまかせてただひたすらに、ふるさと横浜とその近辺を巡ります。※現在アップしている「歴史と民話とツーリング」の記事は緊急事態宣言発令前に取材したものです。

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鳩川のほとりに住んだという 小豆とぎ婆の伝説(相模原市)

 かつて「さがみっぱら」と揶揄された相模原市も現在では発展著しく、かつての原野や田んぼはすっかり開発され、里山は切り崩されて住宅街へと変貌を遂げています。

 

その相模原市の中を流れる鳩川の辺りは、川にそってうっそうとした森の中に沼が点在するようなところで、とても寂しいところだったといいますが、今ではすっかり様相も変わって往時の面影はありません。

 

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うっそうとした寂しい森林となれば、そこに住むものは動物と妖怪、と昔から相場が決まっています。

この鳩川の周囲もその例外に漏れず、妖怪「あずきとぎ婆」の伝説が残されています。

 

むかし、石橋部落の東側を流れる鳩川の周辺は、こんもりと樹木が覆いかぶさり、昼間でも薄暗く気味の悪いところでした。

 

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ある夏の暑い日、ここを通りかかった旅人が木陰を見つけ、また鳩川の清流も近かったので、ここでしばしの休息を取る事にしました。

それまで厳しかった日ざしも木々の間から漏れる優しい木漏れ日となり、聞こえて来るのは鳥の声と鳩川のせせらぎばかりという、とても静かな所だった事でしょう。

 

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旅人が鳩川の水で手拭いをすすぎながら汗ばんだ体を拭いていると、ふとザク、ザク、ザク・・・という音が聞こえたのです。

 

旅人は何かと思って音のする方に目をやると、何年も櫛ですいていないかのように白髪を振り乱した老婆がしゃがみ、こちらの方を睨みつけながらザルに入れたアズキを研いでいたのです。

 

その老婆はニンマリと笑うと、

「旅の方、今夜はうちにお泊りなされ」と声をかけて来ます。

これはアズキとぎ婆という恐ろしい妖怪で、もしこの老婆について行こうものなら食い殺されるのが目に見えていたのでした。

 

旅人は、それまでの汗がウソのようにひいて、一目散に駆け出しては逃げ出してしまったのは言うまでもありません。

 

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このような「アズキとぎ婆」の伝承は神奈川県にはいくつも残されており、津久井の谷津川や、横浜市緑区の恩田川、愛川の半原でも言い伝えがあります。

 

このアズキとぎ婆というのは、果たして本当に妖怪だったのかな、と思います。

考えてみれば、当時は水道などなかった時代です。お婆さんが川べりで米やアズキを洗っていても、何の不思議もありません。

もしかしたら、ただ髪型がいいかげんなだけの親切なお婆さんが、本当に親切心で旅人に声をかけたのかも知れません。

 

いま、橋の上から見下ろす鳩川の流れは穏やかです。

しかし、周囲の地面からはだいぶ低いところに流れており、かつてはこの流れを覆うようにして木々が茂り、そこで旅人がしばしの休息をと手拭いをゆすぐ姿が目に浮かぶようで、ここにも時間の流れというものを身にしみて感じたのです。

 

 

 

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